映画評「ニューオーダー」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2020年メキシコ=フランス合作映画 監督ミシェル・フランコ
ネタバレあり
メキシコを舞台にしたディストピア映画。不条理ドラマと言っても良い。
経済格差の甚だしい社会で、政府要人の娘マリアン(ナイアン・ゴンサレス・ノルビンド)の結婚披露宴が進行している。そこへ8年前に辞めた元使用人ロランドが妻の心臓手術費の捻出の為に現れる。一家のうち唯一真摯に応えようとしたマリアンを、使用人マルタ(モニカ・デル・カルメン)の息子クリスチャン(フェルナンド・クアウトレ)がロランドの家に連れて行く。
町ではデモの為に軍隊が出動して、道路封鎖をしていて難儀する。逆に、彼女の離れた要人の家では、デモの連中と通じていた使用人が反旗を翻し、多数の死傷者が出る。要人は重傷を負って入院する。
マリアンは突然現れた兵士たちによって連れ出され、事実上営利誘拐される。富豪の子女が同様の目に遭っているようである。クリスチャンとマルタが誘拐兵士たちの連絡係になるが、二人の善意は悪意によって返される。
暴虐の限りを尽くすデモに乗じて軍事クーデターが起こるお話である。青緑の水が出るところから不気味な気分が醸成される。
ここにおける不条理、登場人物の立場から言えば理不尽は、善意の金持と善意の貧乏人が共に悲劇に遭うところにある。善意が全く報われず、やるせない。
かくお話としては不愉快極まりないが、1970年代に実際に起きたチリのクーデター(CIAが工作した)のカリカチュアのようにも思えて来る。ここまでデタラメではないにしても、軍隊上層部以外に良い思いをした者は殆どいなかったと想像され、大した差がないような気がする。結果を見れば軍事政権の経済政策(実はアメリカのシカゴ学派が後ろで糸を引いていた)は大失敗に終わった。
中南米ではこのようなことが起こる可能性が未だにあるわけで、単なるディストピア映画と片付けることができない怖さがある。
ニュー・オーダーというロック・バンドの伝記かと思った(嘘)。映画の方は中点(・)が付かないのが正しいらしい。
2020年メキシコ=フランス合作映画 監督ミシェル・フランコ
ネタバレあり
メキシコを舞台にしたディストピア映画。不条理ドラマと言っても良い。
経済格差の甚だしい社会で、政府要人の娘マリアン(ナイアン・ゴンサレス・ノルビンド)の結婚披露宴が進行している。そこへ8年前に辞めた元使用人ロランドが妻の心臓手術費の捻出の為に現れる。一家のうち唯一真摯に応えようとしたマリアンを、使用人マルタ(モニカ・デル・カルメン)の息子クリスチャン(フェルナンド・クアウトレ)がロランドの家に連れて行く。
町ではデモの為に軍隊が出動して、道路封鎖をしていて難儀する。逆に、彼女の離れた要人の家では、デモの連中と通じていた使用人が反旗を翻し、多数の死傷者が出る。要人は重傷を負って入院する。
マリアンは突然現れた兵士たちによって連れ出され、事実上営利誘拐される。富豪の子女が同様の目に遭っているようである。クリスチャンとマルタが誘拐兵士たちの連絡係になるが、二人の善意は悪意によって返される。
暴虐の限りを尽くすデモに乗じて軍事クーデターが起こるお話である。青緑の水が出るところから不気味な気分が醸成される。
ここにおける不条理、登場人物の立場から言えば理不尽は、善意の金持と善意の貧乏人が共に悲劇に遭うところにある。善意が全く報われず、やるせない。
かくお話としては不愉快極まりないが、1970年代に実際に起きたチリのクーデター(CIAが工作した)のカリカチュアのようにも思えて来る。ここまでデタラメではないにしても、軍隊上層部以外に良い思いをした者は殆どいなかったと想像され、大した差がないような気がする。結果を見れば軍事政権の経済政策(実はアメリカのシカゴ学派が後ろで糸を引いていた)は大失敗に終わった。
中南米ではこのようなことが起こる可能性が未だにあるわけで、単なるディストピア映画と片付けることができない怖さがある。
ニュー・オーダーというロック・バンドの伝記かと思った(嘘)。映画の方は中点(・)が付かないのが正しいらしい。
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