映画評「ホテル・ニューハンプシャー」
☆☆☆(6点/10点満点中)
1984年アメリカ映画 監督トニー・リチャードスン
ネタバレあり
1980年代映画界で人気のあったジョン・アーヴィングの同名小説を英国のトニー・リチャードスンが映画化した重喜劇。当時人気のジョディー・フォスターとナスターシャ・キンスキーも出ているので、二番館で観たような気がする。
で、今回再鑑賞しようと思ったのは、小説を読んだことから。映画の内容が全く思い出せず、こんな重い話だったけかと思い、ライブラリーから取り出して観ることにしたのである。
1930年代。ホテルで従業員同士だった父親(ボー・ブリッジス)と母親(リサ・べインズ)は、ホテルに熊を連れてやってくるユダヤ系オーストリア人のフロイトにその帰国前に薦められて、結婚する。
戦後5人の子供の親となっていた二人は、子供たちの協力を得て、廃校になった女子高を改装してホテルを開業する。数年後フロイトから手紙が届き、一家はオーストリアで殆ど失明したフロイトのホテルの引き継ぐことにする。二手に分かれて後から出発した母親と末っ子が飛行機事故で帰らぬ人となる。
さて、そこは売春婦と過激派がそれぞれの階を占めているという変なホテル。やがて過激派の劇場爆破を未然に防いだ功績で一家は表彰され、帰国することになるが、この騒ぎで父親は失明する。
小人症の次女リリー(ジェニファー・ダンダズ)が成長(背が大きくなる)する為に書いた一家の伝記的小説が成功を収め、ニューヨークでホテル暮らしを始める。
縦糸に当たるホテル経営を中心に書くとこんなお話だが、横糸の綾を成すのは一家自体には良いことなど殆どない人生の模様である。
父親が夢追い人で実際的なことに疎い人なのはともかく、長男フランク(ポール・マクレーン)は同性愛に苦しみ、同窓生に輪姦された長女フラニー(ジョディー)はオーストリアで語り手である次男ジョン(ロブ・ロウ)との近親相姦の思いに気付き、リリーは成長しきれずに結局ホテルから飛び下り自殺する。
しかし、アメリカで近親相姦を果たした後振り切れたフラニーは元フットボール選手の同窓生と、ジョンは自分を醜いと思い込んで熊の着ぐるみを被るスージー(ナスターシャ)と結ばれる。
死と生の物語。少なくない死以上に、異様なほど性愛絡みの話が多いのは、勿論性は生にほかならないからである。
お話は物凄いテンポで進む。文庫本で800ページを超える小説を読んだ後では余計にそう感じるが、そうでなくとも前後の脈絡を考える間もないほど速い。退屈しない(前回はここを重視したと思う)代わり、通常のスピードで見せれば生まれるであろう余情も余韻も出て来ず、今回は非常に物足りなかった。
現状109分であるのに対し、最低でも150分くらいは必要だった話ではないか。小説の再現を目指して、色々とあるキーワードを生かし、ジョン、フラニー、フランク、リリーの苦悩をきちんと描くなら、二部作くらいにしたい。
僕は常に原作を基準に映画版の評価はしないが、原作ファンはこの映画化には失望したと思う。
1984年アメリカ映画 監督トニー・リチャードスン
ネタバレあり
1980年代映画界で人気のあったジョン・アーヴィングの同名小説を英国のトニー・リチャードスンが映画化した重喜劇。当時人気のジョディー・フォスターとナスターシャ・キンスキーも出ているので、二番館で観たような気がする。
で、今回再鑑賞しようと思ったのは、小説を読んだことから。映画の内容が全く思い出せず、こんな重い話だったけかと思い、ライブラリーから取り出して観ることにしたのである。
1930年代。ホテルで従業員同士だった父親(ボー・ブリッジス)と母親(リサ・べインズ)は、ホテルに熊を連れてやってくるユダヤ系オーストリア人のフロイトにその帰国前に薦められて、結婚する。
戦後5人の子供の親となっていた二人は、子供たちの協力を得て、廃校になった女子高を改装してホテルを開業する。数年後フロイトから手紙が届き、一家はオーストリアで殆ど失明したフロイトのホテルの引き継ぐことにする。二手に分かれて後から出発した母親と末っ子が飛行機事故で帰らぬ人となる。
さて、そこは売春婦と過激派がそれぞれの階を占めているという変なホテル。やがて過激派の劇場爆破を未然に防いだ功績で一家は表彰され、帰国することになるが、この騒ぎで父親は失明する。
小人症の次女リリー(ジェニファー・ダンダズ)が成長(背が大きくなる)する為に書いた一家の伝記的小説が成功を収め、ニューヨークでホテル暮らしを始める。
縦糸に当たるホテル経営を中心に書くとこんなお話だが、横糸の綾を成すのは一家自体には良いことなど殆どない人生の模様である。
父親が夢追い人で実際的なことに疎い人なのはともかく、長男フランク(ポール・マクレーン)は同性愛に苦しみ、同窓生に輪姦された長女フラニー(ジョディー)はオーストリアで語り手である次男ジョン(ロブ・ロウ)との近親相姦の思いに気付き、リリーは成長しきれずに結局ホテルから飛び下り自殺する。
しかし、アメリカで近親相姦を果たした後振り切れたフラニーは元フットボール選手の同窓生と、ジョンは自分を醜いと思い込んで熊の着ぐるみを被るスージー(ナスターシャ)と結ばれる。
死と生の物語。少なくない死以上に、異様なほど性愛絡みの話が多いのは、勿論性は生にほかならないからである。
お話は物凄いテンポで進む。文庫本で800ページを超える小説を読んだ後では余計にそう感じるが、そうでなくとも前後の脈絡を考える間もないほど速い。退屈しない(前回はここを重視したと思う)代わり、通常のスピードで見せれば生まれるであろう余情も余韻も出て来ず、今回は非常に物足りなかった。
現状109分であるのに対し、最低でも150分くらいは必要だった話ではないか。小説の再現を目指して、色々とあるキーワードを生かし、ジョン、フラニー、フランク、リリーの苦悩をきちんと描くなら、二部作くらいにしたい。
僕は常に原作を基準に映画版の評価はしないが、原作ファンはこの映画化には失望したと思う。
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