映画評「ビートルズとインド」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2021年イギリス映画 監督アジョイ・ボーズ
ネタバレあり

ビートルズ絡みのドキュメンタリーはチャンスがあれば必ず観るが、2022年の初めにNHK-BSが前後編で放送したものにて鑑賞。半吹替版。
 半吹替版と称すのは、一つ証言者のオリジナル音声が小さく背後に聞こえること、一つビートルズのメンバー4人の声はご本人の声プラス字幕というスタイルであるからである。NHKの配慮なのか知らないが、ファン心理をよく知っていると思う。

前半は、母親の胎教によって生れる前からインド音楽に触れていたジョージ・ハリスンが、1965年にインド楽器に多大な関心を抱き、やがてラーガ・ロックに結び付く過程を描く。ジョージはシタールの名手ラヴィ・シャンカールに学ぶが、シャンカールはそう簡単に弟子を取らないらしい。ジョージの熱意が彼を動かしたのだろう。厳密な意味での巧拙は解らないが、レコードでの彼のシタールはなかなかのものだ(但し、ラーガ・ロック3曲は余り好かない)。

中盤からジョージの影響で他の三人もインド思想に目覚め、1968年前半リシケーシュにおけるマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーのレクチャー参加時の経緯が綴られる。
 そして、インド思想への傾倒の薄い順から帰国していく。まずリンゴ・スター(夫婦)、程なくポール・マッカートニー(と婚約者ジェーン・アッシャー)。ジョンとジョージは暫く粘るが、ジョンを支配し(出世し)たくてたまらない詐欺師のような男アレクシス・(ダマカスならで)マルダスという男が、マハリシと女性使徒との関係をでっちあげて、非常に純粋なジョンを信じ込ませる。ジョンは、ジョージも引っ張って、帰国する。ジョンは帰国の車の中で早くもファンの間でマハリシ批判の曲として有名な名曲「セクシー・セディ」の元を作り出したという。

ジョージだけはそのままインドの音楽と思想への傾倒を維持し、他の三人も後年態度を変えていく。

大体これが本作の内容で、膝を打たせたのは、インド思想/音楽と麻薬(とりわけLSD)の関係をめぐり、インド思想と麻薬を結び付けるのは間違いであるという発言である。僕も他人(ひと)のことは言えず、ラーガ・ロックやシタールの音を聞くと、麻薬を連想してしまう。反省しないといけないと思った次第。

内容については三分の二くらいは既知だが、動画は8割方が初めてのような気がする。ミア・ファローの妹プルーデンスは初めて見た(ビートルズ・ファンなら「ディア・プルーデンス」でお馴染み)。

といった具合で、ビートルズ・ファンなら概ね楽しめる。クラシック・ロックが好きな方も楽しめるだろう。
 以前にも言ったように、ビートルズは既に学問の一分野になっているので、そうでない方も観ておいた方が良いかもしれないですよ。

学問と言えば、音楽関係者を筆頭に、インドの方々が数多く登場するのもインドの音楽を研究する上で興味深い。その中に、1974年に世界的に爆発的にヒットしたカール・ダグラス「吼えろ!ドラゴン」Kung Fu Fighting をプロデュースするピドゥがいる。

2,3日後の音楽ブログ【オカピーの採点表】にて、ジョン・レノンのソロ・アルバム『ジョンの魂』を取り上げます。ブログのスタートから半年経ちますが、コメントを寄せる人はたった一人(コメント自体は少なくない)。コメント投稿者2人目になるチャンスですよ(笑)

この記事へのコメント