映画評「今はちょっと、ついてないだけ」
☆☆★(5点/10点満点中)
2022年日本映画 監督・柴山健次
ネタバレあり
伊吹有喜なる閨秀作家の作品の映画化は「四十九日のレシピ」「ミッドナイト・バス」という二作を見ている。いずれも手応えのある作品だった。今回はどうだろうか。
バブル期後期に一世を風靡したドキュメンタリー番組で主役を演じたカメラマン玉山鉄二は、訳あって引退状態だったところ、病院で母と知り合った高齢女性の遺影とも言える写真を撮ることになる。その写真が良い出来で、依頼をする人が現れ、まがりながら写真家として復活する。
その女性の息子が今は落ち目のTV関係者・音尾琢真で、妻との関係が悪くなって家を飛び出すことになり、玉山鉄二と再会、彼が現在住んでいるシェアハウスの住人となる。
その家の唯一の住人だったのがメーキャップ・アーティスト志願の深川麻衣。霊感商法に騙されずに済んだ後は自らの腕前を信じて前進、音尾をマネージャー的に据えた玉山の仕事にも協力して力を発揮していく。
ここにプロダクションを解雇になった芸人・団長安田が加わる。
この辺りまでカメラマンを狂言回しとした再生物語として大衆的に楽しめる作りとなっているが、後半はかなり混沌とする。玉山が何故現在のような立場になったかということについて、唐突に説明され出すのである。突然絡み出す高橋和也扮する人物が相当謎で、かつてのTV番組にも絡んでいる事務所の所長らしい。
男が言うのは、投資詐欺で発生した事務所か何かの借金を強いられもしないのに玉山が背負い、それを一人で処理してきたという事実。玉山は彼に良い思いを抱いていないものの、TVの仕事で再び縁が出来るのである。所長は悪人に近いが、彼の残酷な言葉は(結果的に?)写真家に対する励ましの言葉になってい、玉山は復活するのだ。
原作は知らないが、監督・柴山健次が担当した脚色が良くない。シークエンスが上手く繋がっていない部分が多く、例えば、死んだと思っていた母親が突然出て来た時には少々混乱した(すぐに巻き戻しと判る)。
一番問題なのは、回想もしくはフラッシュバックで出て来る若い女性が誰なのか最後までよく解らないこと(フラッシュバックの主か曖昧なところもある)。主人公と深い関係のあったらしい二人の女性のどちらかだろうが、多分所長の下に預けられている歌手志望の娘の母親のほうだと思う。しかし、誰なのか解らないのではその登場の目的も解らないわけで、舌足らずも甚だしいと言わなければならない。
前半が写真家を中心とした群像劇、後半が写真家をめぐる真相という構成もぎこちない感じが強い。前半の人情味を買って☆☆★にするが、実力的にはもっと低い。
不明な点について調べたくなり、原作を図書館に予約した。10日後には解明するのだろう。
2022年日本映画 監督・柴山健次
ネタバレあり
伊吹有喜なる閨秀作家の作品の映画化は「四十九日のレシピ」「ミッドナイト・バス」という二作を見ている。いずれも手応えのある作品だった。今回はどうだろうか。
バブル期後期に一世を風靡したドキュメンタリー番組で主役を演じたカメラマン玉山鉄二は、訳あって引退状態だったところ、病院で母と知り合った高齢女性の遺影とも言える写真を撮ることになる。その写真が良い出来で、依頼をする人が現れ、まがりながら写真家として復活する。
その女性の息子が今は落ち目のTV関係者・音尾琢真で、妻との関係が悪くなって家を飛び出すことになり、玉山鉄二と再会、彼が現在住んでいるシェアハウスの住人となる。
その家の唯一の住人だったのがメーキャップ・アーティスト志願の深川麻衣。霊感商法に騙されずに済んだ後は自らの腕前を信じて前進、音尾をマネージャー的に据えた玉山の仕事にも協力して力を発揮していく。
ここにプロダクションを解雇になった芸人・団長安田が加わる。
この辺りまでカメラマンを狂言回しとした再生物語として大衆的に楽しめる作りとなっているが、後半はかなり混沌とする。玉山が何故現在のような立場になったかということについて、唐突に説明され出すのである。突然絡み出す高橋和也扮する人物が相当謎で、かつてのTV番組にも絡んでいる事務所の所長らしい。
男が言うのは、投資詐欺で発生した事務所か何かの借金を強いられもしないのに玉山が背負い、それを一人で処理してきたという事実。玉山は彼に良い思いを抱いていないものの、TVの仕事で再び縁が出来るのである。所長は悪人に近いが、彼の残酷な言葉は(結果的に?)写真家に対する励ましの言葉になってい、玉山は復活するのだ。
原作は知らないが、監督・柴山健次が担当した脚色が良くない。シークエンスが上手く繋がっていない部分が多く、例えば、死んだと思っていた母親が突然出て来た時には少々混乱した(すぐに巻き戻しと判る)。
一番問題なのは、回想もしくはフラッシュバックで出て来る若い女性が誰なのか最後までよく解らないこと(フラッシュバックの主か曖昧なところもある)。主人公と深い関係のあったらしい二人の女性のどちらかだろうが、多分所長の下に預けられている歌手志望の娘の母親のほうだと思う。しかし、誰なのか解らないのではその登場の目的も解らないわけで、舌足らずも甚だしいと言わなければならない。
前半が写真家を中心とした群像劇、後半が写真家をめぐる真相という構成もぎこちない感じが強い。前半の人情味を買って☆☆★にするが、実力的にはもっと低い。
不明な点について調べたくなり、原作を図書館に予約した。10日後には解明するのだろう。
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