映画評「四畳半タイムマシンブルース」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2022年日本映画 監督・夏目真吾
ネタバレあり

森見登美彦という作家も「四畳半神話大系」という作品も名前は知っているが、作品に触れたことはない。「夜は短し歩けよ乙女」というアニメ映画化で触れたのみ。その「四畳半神話大系」の登場人物が、僕のご贔屓作品「サマータイムマシン・ブルース」(2005年)のお話をそのまま繰り広げるという、一種のコラボ作品である。

灼熱の真夏。下鴨幽水荘なる下宿で、コーラにより唯一エアコンのリモコンが壊れる事件が発生する。電気屋からリモコンは直らないという宣告を受けてがっかり。
 そこへ田村なる謎の青年(声:本田力)と共に、タイムマシンらしき機会が出現。エアコンのある部屋の住人である “わたし”(声:浅沼晋太郎)が、映画サークルに所属する大学の後輩 “明石さん”(声:坂本真綾)らと協力し合って、昨日に戻って壊れる前のリモコンを取って来れば万事解決と提案する。
 少々心許ない三人の第一陣が出陣した後、二人はそれが達成されると歴史が変わってしまい自分達が存在しないことになりかねないと、今度は打って変わってリモコンを戻さないよう必死になる。

基本となる「サマータイムマシン・ブルース」の面白味は、過去を多少変えかつタイムパラドックスを起こさないように時間旅行をするというタイム・トラヴェルものの定石とは違って、過去を変えない為にタイムマシンを駆使して泥沼に入る(実際泥沼に入る人が出て来るけど、違う意味です)というところで、回収ぶりが実に面白く、明白なタイムパラドックスは起きていないと思われる。リモコンが99年前からあるとなると、厳密には二つ存在することになるが、運命の前にはタイムマシンも無力だという “明石さん” の時間観によれば問題はない(そもそも時間旅行をすれば二つ存在するものが色々出て来る)。

登場人物が多数いる中にひねくれ者がいたり、色々ややこしい状況を潜り抜ける為に涙ぐましい(笑)努力をすることから生まれる可笑し味が加わり、大いに楽しめる。実写版を見ていなければ、☆☆☆☆を付けたいくらい。

井上陽水がセカンド・アルバムに収めた「かんかん照り」という曲で灼熱の夏を歌ったのを思い出す。中学生だった時、陽水はかぐや姫共々ものすごい人気だった。修学旅行のバスの中で野郎どもは、陽水かかぐや姫ばかり歌っていた。バスの中で歌いこそしなかったが、ビートルズの人気も物凄かった。多分現役時代の60年代より70年代前半ビートルズを語る中学生は多かったのではないか。あんなに彼らが好きなのに、どうして英語の成績があの程度の生徒が多かったのだろう?

この記事へのコメント