映画評「らしゃめんお万 彼岸花は散った」

☆☆★(5点/10点満点中)
1972年日本映画 監督・曾根中生
ネタバレあり

WOWOWによる日活ロマン・ポルノ・シリーズ第1弾。「らしゃめんお万」シリーズの第二作ということだが、どうせなら第一作も放映して欲しかったなあ。

昭和初期。眠狂四郎の昭和女性版らしゃめんお万(サリー・メイ)が殺人での刑期を終えて出所、父親違いの妹・山科ゆりに会いに行くが、今はヤンキー娘になっている彼女は恋人を殺した姉に冷たく当たる。お万は、妹のいた店を乗っ取って賭博場を開いている任侠組織の盲目壺振り・高橋明の代わりに彼女が壺を振ることになる。
 仲間を組織に拉致された妹がミイラ取りがミイラになってしまうというへまをやらかし、お万が犠牲になろうとしても、変質的な二代目・前野霜一郎には意味を成さない。
 姉妹を何とかしようと奮闘する代貸(賭場を仕切る任侠組織のNo.2)五条博が殺され、妹も痛めつけられた末に死ぬ。お万は復讐を誓って、高橋と殴り込みをかける。

という復讐譚で、一見真面目なお話に見えるが、眠狂四郎、藤純子の「緋牡丹博徒」シリーズ、「日本任侠伝」シリーズ、座頭市のパロディーみたいなものだから、ポルノ場面において折にギャグ的なワン・ショットが挿入されたりする。面白かったのは、あたかもアスペクト比4:3の画面を16:9にしたような肉林シーン。一瞬TV設定が可笑しくなったのかと焦りましたよ。
 それほど大したものではないが、襖を3回続け様に開けるのも、監督が曾根中生だけに、日活の先輩・鈴木清順「刺青一代」(1965年)のオマージュというより、パロディーと見る。縦の構図を取り入れ、もっと本格的に真似てみれば良かったものを。

男が皆倒れ、ヒロインと壺振りの情婦・林美樹(第一作でヒロインに壺振りを教えた師匠。そのままの役のよう)が生き残るというのは、現在アメリカのフェミニズム映画の図式において、半世紀余りも先行しているではないかとニヤリ。

マギー・メイを思い出させるサリー・メイは純日本人。金髪にするとそれなりに外国人に見えなくもない容貌でしたね。

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