映画評「フェイブルマンズ」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2022年日本映画 監督スティーヴン・スピルバーグ
ネタバレあり
スティーヴン・スピルバーグの自伝的映画。
終戦直後に生を受けたサミー(思春期後期以降ガブリエル・ラベル)は、1952年エンジニアの父親バート(ポール・ダノ)と母親ミッツィ(ミシェル・ウィリアムズ)に連れられて観た、スペクタクル映画「地上最大のショウ」の列車事故の場面に影響され、模型の列車と自動車の衝突に凝る。
母親の提案で与えられた8ミリ・カメラでこれを撮って「地上最大のショウ」の再現に成功したことから映画作りの面白さに目覚めたサミーは、ボーイスカウトのメンバーたちを使って8ミリ映画製作に邁進していく。
妹3人もいる一家は父親の出世と共にアリゾナに越す。一家の友人・父親の同僚たる技術者ベニー(セス・ローゲン)も同行する。しかし、サミーはカメラを回しホーム映画を編集するうちに、母親が陰気な父親とは違う明るさのあるベニーに惹かれているのに気付き、暫しカメラから遠のく。
一家はカリフォルニアに引っ越すことになるが、今度ベニーは同行しない。これにより母親は落ち込み、結局離婚して娘たちとアリゾナに戻る。高校でひどく差別されるサミーは、キリスト・マニアの同校性モニカ(クロエ・イースト)と昵懇となり、やがて彼女の家が提供する16ミリ・カメラで卒業生の一夏を収める記録映画を作る。
卒業後CBSに採用され、たまたま隣室にいたジョン・フォード監督(デーヴィッド・リンチ)と出会う。
スピルバーグの事実上の伝記映画ということであれば、やはり映画ネタに興味が向かう。映画ファンならば、最初の「地上最大のショウ」を見る場面と、最後のジョン・フォードとの面会がお楽しみとなる。
中でも、 “地平線は真ん中にあるとつまらない” というフォードの映画術を聞いた主人公が通りを去っていくところで、カメラがティルトアップする。通常のティルトアップは、上がった角度の先にあるものを見せる為に行われるが、この映画では地平線を下げる為に為されるのだ。
この最後のワン・ショットに興奮してしまうと、途中で色々とゴタゴタする家族問題や高校での模様はどうでも良いと言いたいくらいになるが、しかし、スピルバーグが映画の中に家族の要素を入れることが多いのを考えると、映画の核を成す、母親を中心にした家族の模様は頭に残しておかねばならない。「E・T」の家庭を思い出されるものがあるではないか。
それに比べると、学園ドラマ部分は型通りで面白味を欠く。
ドラマとしては【内緒】がキーワードだが、それが通奏低音になるほど生かされるわけではない。
画面については、移動撮影が目立つ。スピルバーグはこんなに移動撮影を使ったけか?
スピルバーグは山田洋次並みにショットの繋ぎが良く、僕はいつも絶品と思っている。高速度撮影(スローモーション)を使わないのも良い。僕が記憶している唯一のスローは、「激突!」のタンクローリーが落下するところ。タンクローリーを原始時代のマンモスに見立てる為にあの長さが必要だったのだ。
2022年日本映画 監督スティーヴン・スピルバーグ
ネタバレあり
スティーヴン・スピルバーグの自伝的映画。
終戦直後に生を受けたサミー(思春期後期以降ガブリエル・ラベル)は、1952年エンジニアの父親バート(ポール・ダノ)と母親ミッツィ(ミシェル・ウィリアムズ)に連れられて観た、スペクタクル映画「地上最大のショウ」の列車事故の場面に影響され、模型の列車と自動車の衝突に凝る。
母親の提案で与えられた8ミリ・カメラでこれを撮って「地上最大のショウ」の再現に成功したことから映画作りの面白さに目覚めたサミーは、ボーイスカウトのメンバーたちを使って8ミリ映画製作に邁進していく。
妹3人もいる一家は父親の出世と共にアリゾナに越す。一家の友人・父親の同僚たる技術者ベニー(セス・ローゲン)も同行する。しかし、サミーはカメラを回しホーム映画を編集するうちに、母親が陰気な父親とは違う明るさのあるベニーに惹かれているのに気付き、暫しカメラから遠のく。
一家はカリフォルニアに引っ越すことになるが、今度ベニーは同行しない。これにより母親は落ち込み、結局離婚して娘たちとアリゾナに戻る。高校でひどく差別されるサミーは、キリスト・マニアの同校性モニカ(クロエ・イースト)と昵懇となり、やがて彼女の家が提供する16ミリ・カメラで卒業生の一夏を収める記録映画を作る。
卒業後CBSに採用され、たまたま隣室にいたジョン・フォード監督(デーヴィッド・リンチ)と出会う。
スピルバーグの事実上の伝記映画ということであれば、やはり映画ネタに興味が向かう。映画ファンならば、最初の「地上最大のショウ」を見る場面と、最後のジョン・フォードとの面会がお楽しみとなる。
中でも、 “地平線は真ん中にあるとつまらない” というフォードの映画術を聞いた主人公が通りを去っていくところで、カメラがティルトアップする。通常のティルトアップは、上がった角度の先にあるものを見せる為に行われるが、この映画では地平線を下げる為に為されるのだ。
この最後のワン・ショットに興奮してしまうと、途中で色々とゴタゴタする家族問題や高校での模様はどうでも良いと言いたいくらいになるが、しかし、スピルバーグが映画の中に家族の要素を入れることが多いのを考えると、映画の核を成す、母親を中心にした家族の模様は頭に残しておかねばならない。「E・T」の家庭を思い出されるものがあるではないか。
それに比べると、学園ドラマ部分は型通りで面白味を欠く。
ドラマとしては【内緒】がキーワードだが、それが通奏低音になるほど生かされるわけではない。
画面については、移動撮影が目立つ。スピルバーグはこんなに移動撮影を使ったけか?
スピルバーグは山田洋次並みにショットの繋ぎが良く、僕はいつも絶品と思っている。高速度撮影(スローモーション)を使わないのも良い。僕が記憶している唯一のスローは、「激突!」のタンクローリーが落下するところ。タンクローリーを原始時代のマンモスに見立てる為にあの長さが必要だったのだ。
この記事へのコメント
この作品は内容も山田洋次みたいなかんじになっていて、こういうとあれですが、スピルバーグこういう映画も撮れるんだ、撮れるようになったんだ! という気持ちになりました。最後にジョン・フォードが出てくるのもよかったです。
>スピルバーグこういう映画も撮れるんだ、撮れるようになったんだ!
この映画を観た時、特にそういう感想はなかったですが、nesskoさんのコメントにより、「カラー・パープル」を観た時にちょっと人工的な感じがしたのを思い出しましたよ。