映画評「スペードの女王」(1949年)

☆☆★(5点/10点満点中)
1949年イギリス映画 監督ソロルド・ディキンスン
ネタバレあり

若くして決闘で死んだアレクサンドル・プーシキンはご贔屓の作家だ。特に好きなのは「エフゲニー・オネーギン」。怪奇小説「スペードの女王」はごく短いので2度読んでいるが、そこまで愛好してはいない。

ナポレオンに憧れる野心的な工兵ゲルマン=英語ではヘルマン(アントン・ウォルブルック)は、その為に堅実な生活を送って来たが、古書店で手に入れた本で知った60年にカード必勝法を手に入れたとされる伯爵夫人(イーディス・エヴァンズ)がまだ存命であることを知ると、その使用人たる娘リザヴェータ(イヴォンヌ・ミッチェル)を誑し込むべく恋文作戦を展開、最終的にはデートを装って家の中に入り、拳銃を取り出して伯爵夫人を脅迫しその必勝法を聞き出そうとするが、恐怖で夫人が急死してしまう。
 が、亡くなった夫人は幻聴として現れ、“3,7,1”の順で賭けると勝つ、但し、リザヴェータと結婚するのを条件とする、と言う。ゲルマンは、それを守ろうとリザヴェータに言い寄るが、今や彼の人間性を知った彼女に拒絶される。まあ良いと意気込み大金を持って賭博場に乗り込む。3と7で確かに勝った彼は次にAのカードを提示するが、彼が選んだのはQと判明、遂に発狂する。

必勝法は呪いとリンクしていたという恐怖劇で、カードのクイーンがニヤリとするところが凄味。

原作ではぐっとシンプルであったリザヴェータ絡みの場面を恋愛映画風に尺を割いて描き、その代わり三日間で行われるカードを一日の出来事に縮めている。映画ならではの工夫と言うべきだが、怪奇劇のようになっていくまで(前半)が必要な布石の量を越えて長たらしく、冗漫にすぎる。

後半は、ゴシック映画に実績のある英国映画らしい格調高い神秘・怪奇ムードが醸成され、相当挽回するが、ちと遅かったと言うべし。

ハートのエースが出て来ない。

この記事へのコメント

2023年10月06日 16:28
アマゾンプライムですよね。
適当に選んで見た作品です。
ウォルブルック氏以外は、知っているメンツがおらず(監督さえも)でしたが、後半からあの結末で、まあまあ面白かったと思いました。
オカピー
2023年10月06日 22:09
ボーさん、こんにちは。

>アマゾンプライムですよね。

そうです。

>後半からあの結末で、まあまあ面白かったと思いました。

それは事実ですが、僕には前半のマイナスが大きすぎました。