映画評「コンペティション」(2021年)

☆☆☆(6点/10点満点中)
2021年スペイン=アルゼンチン合作映画 監督ガストン・ドゥプラット、マリアーノ・コーン
ネタバレあり

1980年にクラシック・コンクールを描いた同名邦題のアメリカ映画が作られたが、全く関係ない。こちらは、近年目立つスペインとアルゼンチン合作の、映画俳優同士の激しいライバル意識を描いた喜劇である。

ある財団の大富豪ホセ・ルイス・ゴメスが何か偉大なるものを残そうと、周囲に薦められて、全く畑違いの映画製作に乗り出す。結果的にある兄弟の確執を描く小説を、気鋭の女性監督ペネロペ・クルスが映像化することになり、彼女はスペインの大スター、アントニオ・バンデラスとアルゼンチン出身の大ベテラン俳優オスカー・マルティネスをキャスティングする。
 表面的な名声を求める通俗派バンデラスと、そうしたものの価値観を否定する孤高派マルティネスは最初こそ握手するが、事あるごとに対立を繰り返し、風変わりなスタイルを取る高踏派ペネロペが繰り出す演出手法が、それを更にややこしくしていく。

というお笑い。

ある程度映画を見ている人であれば、突然バンデラスによる癌の告白が芝居であることは容易に察せられるし、そこに登場人物同様騙された人の良い観客もマルティネスの告白が芝居であることはさすがに想像がつくでありましょう。
 この劇中劇的なやり取りの面白さが目を引き、女性監督の風変わりな演出スタイルや男優人の対抗心は、些か極端にデフォルメされているものの、映画界でこうしたことがままあるだろうという印象を持って終わる。劇中の兄弟の確執と俳優の確執が絶妙にオーヴァーラップしていけば、ぐっと面白い作品になったにちがいない。

人間そのものよりは映画界の裏側を楽しむべき作品だろう。今年の初春に公開されたばかりの作品なので終盤の詳細は伏せるが、最後の会見は相当シニカルでブラック。僕には底が割れている感じがして絶賛は出来ないものの、そこそこ面白い。

フランス映画でも作られそうなお話でした。

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