映画評「猫は逃げた」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2022年日本映画 監督・今泉力哉
ネタバレあり
絶賛はしなかったものの密かに愛している映画に井口奈巳監督「犬猫」がある。人を動物に喩えることはままあるが、解る人だけに解るように喩えたところの絶妙ぶりに僕は膝を打った。惚れ惚れした。
何てことを言い出したのは、本作の猫が絡んで繰り広げられる面倒臭い恋愛心理がそこはかとなく可笑しく、思い出したからである。
週刊誌記者の毎熊克哉とレディース・コミックに書いている漫画家・山本奈衣瑠は離婚することに決める。しかし、愛猫カンタの “親権” をめぐって二人は真剣に議論になり、解決案のないままずるずる日を過ごしている。
それに嫌気がさしたのは、夫君の相棒でいいつか妻の座に収まってやろうと考えている美人カメラマン(ウーマンか?)手島実優で、猫が理由ならとカンタを誘拐する。これにより離婚が決定したら細君に返すつもりである。これに協力する羽目になるのが、実は細君と不倫をしているコミック誌編集者の井之脇海。
結局、思わぬことで猫誘拐事件は発覚、激しい口論となるが、これにより夫婦は絆を取り戻し、不倫者二人は恋人同士になる。
猫が生み出す恋愛喜劇。そもそも夫婦は捨てられていたカンタが取り持つ形で結ばれ、カンタがそのかすがいになり、カンタが新しいカップルを生む。
脚本を主に城定秀夫が書き、それを日本のエリック・ロメールこと(と僕が勝手に言っている)今泉力哉が映像に移した模様。二人でいる場面におけるショットの切り取り方はいかにもロメールっぽい時の今泉監督だが、最後の4人のグダグダした長い口論には城定監督らしさがあるのではないかという気がする。何故なら今泉監督は3人以上が一緒に会話する場面は(あったとしても)こう長々しく撮らないからである。「窓辺にて」の二組の男女が話し合う場面を珍しいと思ったくらいだ。
城定秀夫は色々なタイプの作品を撮るらしくまだ把握し切れていないが、今泉力哉についてはちょっとフランス的に面倒臭いが憎めない恋愛心理コント(短編小説の類)を作る監督というイメージが僕の中で固まってい、特にツー・ショットの画面の鮮やかさに参ってしまうことが多い。
この映画は全体的に今泉監督らしさがいっぱいだが、猫を狂言回しにするアイデアと最後の口論は恐らく城定秀夫の趣味ということになろうか?
所謂アイドル系が出て来ない日本映画では、時にこういう洒落っ気のある映画に遭遇するからうっかりできない。
カンタに扮した猫が数日後にアップする映画にも出てきます。
2022年日本映画 監督・今泉力哉
ネタバレあり
絶賛はしなかったものの密かに愛している映画に井口奈巳監督「犬猫」がある。人を動物に喩えることはままあるが、解る人だけに解るように喩えたところの絶妙ぶりに僕は膝を打った。惚れ惚れした。
何てことを言い出したのは、本作の猫が絡んで繰り広げられる面倒臭い恋愛心理がそこはかとなく可笑しく、思い出したからである。
週刊誌記者の毎熊克哉とレディース・コミックに書いている漫画家・山本奈衣瑠は離婚することに決める。しかし、愛猫カンタの “親権” をめぐって二人は真剣に議論になり、解決案のないままずるずる日を過ごしている。
それに嫌気がさしたのは、夫君の相棒でいいつか妻の座に収まってやろうと考えている美人カメラマン(ウーマンか?)手島実優で、猫が理由ならとカンタを誘拐する。これにより離婚が決定したら細君に返すつもりである。これに協力する羽目になるのが、実は細君と不倫をしているコミック誌編集者の井之脇海。
結局、思わぬことで猫誘拐事件は発覚、激しい口論となるが、これにより夫婦は絆を取り戻し、不倫者二人は恋人同士になる。
猫が生み出す恋愛喜劇。そもそも夫婦は捨てられていたカンタが取り持つ形で結ばれ、カンタがそのかすがいになり、カンタが新しいカップルを生む。
脚本を主に城定秀夫が書き、それを日本のエリック・ロメールこと(と僕が勝手に言っている)今泉力哉が映像に移した模様。二人でいる場面におけるショットの切り取り方はいかにもロメールっぽい時の今泉監督だが、最後の4人のグダグダした長い口論には城定監督らしさがあるのではないかという気がする。何故なら今泉監督は3人以上が一緒に会話する場面は(あったとしても)こう長々しく撮らないからである。「窓辺にて」の二組の男女が話し合う場面を珍しいと思ったくらいだ。
城定秀夫は色々なタイプの作品を撮るらしくまだ把握し切れていないが、今泉力哉についてはちょっとフランス的に面倒臭いが憎めない恋愛心理コント(短編小説の類)を作る監督というイメージが僕の中で固まってい、特にツー・ショットの画面の鮮やかさに参ってしまうことが多い。
この映画は全体的に今泉監督らしさがいっぱいだが、猫を狂言回しにするアイデアと最後の口論は恐らく城定秀夫の趣味ということになろうか?
所謂アイドル系が出て来ない日本映画では、時にこういう洒落っ気のある映画に遭遇するからうっかりできない。
カンタに扮した猫が数日後にアップする映画にも出てきます。
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