映画評「愛なのに」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2021年日本映画 監督・城定秀夫
ネタバレあり
「猫は逃げた」に続く今泉力哉監督、城定秀夫監督による共同脚本作第2弾。実際にはこちらが第1弾で、僕が観た順番で言っているだけ。
今回の主筆は今泉力哉で、メガフォンを取っている城定監督は少しいじっている程度だろう。城定監督はカメラをかなり(余り早くないスピードで)動かすのは理解できてきた。もう一つ猫が好きなのも解り、「猫は逃げた」の猫君がここにも出演している。
古書店の若い店主・瀬戸康史が、女子高生の河合優実に求婚される。その為に彼女が捕まるように万引きをするという発端からして実に面白い。
彼女に求愛する同校生がいるが、少年が「窓辺にて」の高校生同様程度が低くて笑わせてくれる。また、今泉監督が「mellow」で、女子中学生に花屋に告白させるという似たシチュエーションを用意しているのを思い出した。
それ以降優実ちゃんは来店の度に求婚の手紙を持って来る。瀬戸君は、学生時代の思い人さとうほなみが結婚するという知らせを親友から受ける。訳ありなので彼には直接の連絡は来ない。
その彼女は、結婚相手の中島歩の結婚準備に対する冷淡さに頭に来るうちに彼が浮気をしていることに気付く。中島君の相手はブライダル・プランナーの向里祐香だが、彼はそうは言えないので相手は昔の知り合いと嘘を付く。
そこで彼女は、婚約者の語った(虚構の)事実の当事者心理を知るべく瀬戸君を誘う。仕方なく彼が応ずると、彼女は恋人よりあれが巧いことに気付き、再度求めてしまう。そのきっかけが神父の “御心のままに” という言葉の誤解によるという辺りが大いに笑わせる。
女子高生に要求されて書いた手紙をその両親が一方的に解釈して瀬戸君のアパートに押しかけて来る。警察沙汰になるが、事なきを得たようである。
さとうさんは結局あれの下手な恋人と結婚し、女子高生は相変わらず手紙を持ってやって来る。二人で仲良く本を読んでいるところへ現れた二人の親友は瀬戸君に披露宴の引き出物を渡す。引き出物は夫婦茶碗である。
この幕切れのほのぼのとして、ジム・ジャームッシュ的な終わり方がいかにも今泉流。
演出が城定監督につき、画面の構図の違いの為にいつもほどエリック・ロメール的には思えないが、それでも相変わらずトゥー・ショットが多い。
シチュエーションの可笑しさに哄笑し、最後に微笑してしまう艶笑喜劇。気に入りました。僕の趣味として、色っぽい場面は観客の想像に任せた方が良かったと思うが。
彼の親友二人に少女が “ただの常連です” と応える台詞にも笑った。主人公の名前が多田(ただ)浩司だからである。考えすぎか(笑)。
ロメールとジャームッシュとウッディー・アレンを合わせてテキトーに割ると今泉力哉になります。匙加減を間違えると、城定秀夫になります。
2021年日本映画 監督・城定秀夫
ネタバレあり
「猫は逃げた」に続く今泉力哉監督、城定秀夫監督による共同脚本作第2弾。実際にはこちらが第1弾で、僕が観た順番で言っているだけ。
今回の主筆は今泉力哉で、メガフォンを取っている城定監督は少しいじっている程度だろう。城定監督はカメラをかなり(余り早くないスピードで)動かすのは理解できてきた。もう一つ猫が好きなのも解り、「猫は逃げた」の猫君がここにも出演している。
古書店の若い店主・瀬戸康史が、女子高生の河合優実に求婚される。その為に彼女が捕まるように万引きをするという発端からして実に面白い。
彼女に求愛する同校生がいるが、少年が「窓辺にて」の高校生同様程度が低くて笑わせてくれる。また、今泉監督が「mellow」で、女子中学生に花屋に告白させるという似たシチュエーションを用意しているのを思い出した。
それ以降優実ちゃんは来店の度に求婚の手紙を持って来る。瀬戸君は、学生時代の思い人さとうほなみが結婚するという知らせを親友から受ける。訳ありなので彼には直接の連絡は来ない。
その彼女は、結婚相手の中島歩の結婚準備に対する冷淡さに頭に来るうちに彼が浮気をしていることに気付く。中島君の相手はブライダル・プランナーの向里祐香だが、彼はそうは言えないので相手は昔の知り合いと嘘を付く。
そこで彼女は、婚約者の語った(虚構の)事実の当事者心理を知るべく瀬戸君を誘う。仕方なく彼が応ずると、彼女は恋人よりあれが巧いことに気付き、再度求めてしまう。そのきっかけが神父の “御心のままに” という言葉の誤解によるという辺りが大いに笑わせる。
女子高生に要求されて書いた手紙をその両親が一方的に解釈して瀬戸君のアパートに押しかけて来る。警察沙汰になるが、事なきを得たようである。
さとうさんは結局あれの下手な恋人と結婚し、女子高生は相変わらず手紙を持ってやって来る。二人で仲良く本を読んでいるところへ現れた二人の親友は瀬戸君に披露宴の引き出物を渡す。引き出物は夫婦茶碗である。
この幕切れのほのぼのとして、ジム・ジャームッシュ的な終わり方がいかにも今泉流。
演出が城定監督につき、画面の構図の違いの為にいつもほどエリック・ロメール的には思えないが、それでも相変わらずトゥー・ショットが多い。
シチュエーションの可笑しさに哄笑し、最後に微笑してしまう艶笑喜劇。気に入りました。僕の趣味として、色っぽい場面は観客の想像に任せた方が良かったと思うが。
彼の親友二人に少女が “ただの常連です” と応える台詞にも笑った。主人公の名前が多田(ただ)浩司だからである。考えすぎか(笑)。
ロメールとジャームッシュとウッディー・アレンを合わせてテキトーに割ると今泉力哉になります。匙加減を間違えると、城定秀夫になります。
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