映画評「デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2022年アメリカ=ドイツ合作映画 監督ブレット・モーゲン
ネタバレあり

デイヴィッド・ボウイのアルバムは、第2作『スペース・オディティ』(インディ・レーベル時代の第1作は世間では殆ど存在しないような扱い)から第14作『レッツ・ダンス』まで持っているが、やはりこの映画のタイトルに借用された「ムーンエイジ・デイドリーム(月世界の白昼夢)」も収められている第5作、グラム・ロック時代の傑作アルバム『ジギー・スターダスト』ばかり聴いてしまう。それ以外のアルバム群については語れるほど聴き込んでいない。

ボウイの伝記的ドキュメンタリーと言って良いだろうが、2022年製作だから当然ボウイはフッテージ映像による登場となる。実は本作に映画用に撮られたインタビュー映像はなく、新規なのはグラフィックだけである。

序盤のうちは映像も言葉もコラージュ風な作りであるが、ある程度落ち着くと、音楽的には時系列に沿って語られるようになっていく。テーマによって昔(多くグラム・ロック時代)に戻る程度である。そして終盤再びコラージュ的になって終了する。

表現に多大な興味を持っていたボウイは絵画もものしてい、少なからず紹介されているが、これが相当に面白い。

さらに、コラージュを構成する要素として古今東西の映画が大量に出て来るのも映画ファンとしては御機嫌で、SF的な設定で評判を呼んだ彼にぴったりの「月世界旅行」「メトロポリス」「バーバレラ」というSFだけでなく、「第七の封印」などもある。これらが白日夢と言うにふさわしい幻想的な気分にいざなう。何故かTVの中で「昼下りの情事」が映っていた。

ボウイの核を成し最も重点的に扱われるグラム・ロックはビジュアルも重要だったからその部分への言及が多いが、ボウイの芸術観について言えば、変化していくことに関して変化していなかった(最近はぶれないなどと言います)という印象が強い。

グラム・ロックの後、ブライアン・イーノと組んだ電子音楽寄りの「ベルリン三部作」は、世評が高いものの、まだ理解には程遠いデス。

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