映画評「シング・フォー・ミー、ライル」

☆☆★(5点/10点満点中)
2022年アメリカ=イギリス合作映画 監督ジョシュ・ゴードン、ウィル・スペック
ネタバレあり

児童文学には甚だ疎いので当然知らない米国の児童文学作家バーナード・ウェーバーのシリーズの実写映画化。CGに頼ったこういう映画を実写というのは未だに抵抗があるが。

NY。売れないマジシャンのヴァレンティ(ハビエル・バルデム)が、歌えるワニのライル(声:ショーン・メンデス)と組んで、売り出そうとするが、内気なライル君は観衆の前では歌えない。
 借金の為にヴァレンティが逃げ出した為にライルが一人(?)残されたアパートメントに、教員一家が越して来る。その息子ジョシュ(ウィンズロー・フェグリー)は一早く彼を発見、その才能に気付き、ライリーによって自らの心配性を改善していくが、周囲がライリーの個性を理解するには少々時間を要する。料理家の母親(コンスタンス・ウー)、教師の父親(スクート・マクネイリー)も次第に感化され、観念に捉われない自由な生き方をし始める。
 ヴァレンティが戻った後も相変わらず歌えないライルは、しかし、遂にジョシュに勇気づけられてスター発掘番組で飛び入りで歌うことができ、人気を得る。
 しかるに、NYの法律は危険生物をアパートに買わせることは許さないと訴える意地悪な住人がいる。が、ヴァレンティの持っていた古い書類がその危機を救う。

心配性に関しては僕も人後に落ちず、現在ちょっと大変なことになっている。僕の場合は完全主義が悪さをすることが多く苦労する。だから、ジョシュは自分を見るようだし、中盤の Rip Up the Recipe は正に計画頓挫をなかなか許そうとせず自らを追い込んでしまう自分を見るようで、その精神で行こうと思うが、なかなか映画のようには行かない。
 この辺りの、 "観念に捉われるな、勇気を持て" といったメッセージは、今その辺りで苦労している爺の僕にもぐっと来るものがあるわけだから、ライルやジョシュのような性格で苦労しているお子様たちには大いに役立つはず。お互い頑張りましょう。

歌詞はともかく昨今のミュージカル・ナンバーはどうもメロディー的にピンと来ないものが多いが、それ以上に気になるのが、極端ではないにしてもオート・チューン(声を蛙のようなケロケロに変える・・・ダジャレになってしまった)を使っていると思われる声である。この映画では少なくともショーン・メンデスには使っていよう。これを軽く使うだけである音域での声が非常に機械的に聞こえる。
 シャナイア・トウェインなど大物のカントリー歌手でさえ大いに使っているこのご時世に古臭いことを言うなと言われそうだが、やはり地声かどうか解りにくいものに与する気にはなれない。この声を聞くといつも萎えてしまう。

ダフト・パンク(彼らが嚆矢となったらしい)のような電子楽器のアーティストがそれに特化するのは構わないと思うが。流行を作り出したダフト・パンク自身がエフェクト以外の目的で使うことは良くないと言っている。広く捉えればカントリー歌手のそれもエフェクトだろうが、僕の考えるエフェクトはそういうものでない。

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