映画評「アフター・ヤン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2021年アメリカ映画 監督コゴダナ
ネタバレあり

アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド」というドイツの近未来SFを8か月前に観たばかりが、これもアンドロイドが重要の役を負っている。あちらが解りやすい西洋哲学SFであるとすれば、こちらは只管静謐で低回的な東洋哲学的映画詩という感じである。
 アレクサンダー・ワインスタインの短編SFの映画化との由。

中年白人男性ジェイク(コリン・ファレル)と黒人女性カイラ(ジョディ・ターナー・スミス)の夫婦と、その中国系の娘ミカ(マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ)と兄ヤン(ジャスティン・H・ミン)。

今までならミカとヤンは養子であるとすぐに想像がついたのだが、近年は就職機会均等という意味でのダイヴァーシティに拘る監督や製作者が白人役に有色人種を配する例が稀にあるので、少しお話が進むまではっきりしない。事情を知らない観客が困惑する、そういう映画作りは止めてほしいですよ。

ミカが養子であることはすぐに解ると共に、ヤンがベビーシッターAIアンドロイド(通称テクノ)であることが、その故障から判明する。以降、映画はひたすらヤンの不在に対する一家の喪失感と悲哀を綴って行く。

ジェイクが奔走した結果どうしても修理が不能と判る一方、メモリー・バンクが残っていることが解り、ヤン全体を博物館で保存して貰うことにする。そのメモリーには、後にエイダ(ヘイリー・ルー・リチャードスン)という名であることが判る妙齢美人が写ってい、ヤンが彼女と極めて人間的な交流をしていたことに人々は驚く。
 さらに、そのメモリーには100年近く前であろうエイダの曾祖母の姿まで写っている。現在のエイダは曾祖母のクローンであるというところも興味深い。

後半は、ヤンのメモリーの中を覗くという形による一種の歴訪ものとも言える内容となってい、記憶というモチーフが東洋的な輪廻転生観を交えて、展開する。
 東洋的思想を持って来るためか、主人公が茶の商売をしている。養女が中国人なのもその繋がりであろう。

空撮などダイナミックな映像を使わないところは対照的だが、哲学的な映像詩という点でテレンス・マリックを想起させる。このタイプは嫌いではないのだが、☆★の数は抑え気味になることが多い。悪しからず。

腐敗もする、ここまでのアンドロイドが出来るのは相当年月を要するだろうが、クローンはやる気なら今でも出来る。宗教的観念が障碍となってなかなか進まない。アンドロイドは宗教的にはほぼ障壁がないだろう。

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