映画評「バビロン」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2022年アメリカ映画 監督デイミアン・チャゼル
ネタバレあり
「イントレランス」(1916年)の製作を題材にした映画に「グッドモーニング・バビロン!」(1987年)という秀作があるが、その「イントレランス」が悪徳・退廃の町としたのが古代中東の大都市バビロンであり、それに喩えられるのが1920年代~30年代のハリウッドである。
サイレント末期の1926年くらいから始まり、芸能人や名士があつまる酒池肉林のパーティーでお披露目する象を連れる為にやってきたのがメキシコ人ディエゴ・カルバで、その結果、人気男優ブラッド・ピットの付き人のようになる。
同パーティーに押しかけた女優志願マーゴット・ロビーはパーティーに参加していた脇役女優がオーバードーズで亡くなったピンチヒッターに起用され、見事に役をこなす。
1927年に本格トーキー映画「ジャズ・シンガー」が公開されたことで、口跡の良くないピットは徐々に落ち目になり、「ハリウッド・レヴィユー」(「雨に唄えば」が初めて歌われたレヴュー映画)もどきの映画に無理やり担ぎ出されたりもする。
ピットを支えた能力が認められ彼の所属するMGMからキノスコープに抜擢されたカルバは同社の重役格になり、同社の人気女優になりかけたものの声や品の悪さから決定的人気を得られないマーゴットを大スターにしようと尽力するが、無軌道な彼女はその努力を水泡に帰したどころか、賭けで借金を負ってギャングに追われる羽目になる。
彼女を愛するカルバは知恵を絞るが、その為に自分が一人でLAを追われる羽目になる。その頃落ち目のピットは自殺、彼女は数年後に死亡する。
1952年に妻子を連れLAに戻ったサイレントからトーキーに移行する時代のドタバタを描いたミュージカル映画「雨に唄えば」を見ておよそ四半世紀前のことを思い出して感慨にふける。
ブラッド・ピットのモデルは「ハリウッド・レヴィユー」もどきの映画があることから1936年に心臓発作で亡くなったジョン・ギルバートだろう。
そして最後はお馴染み「ニュー・シネマ・パラダイス」風になるが、本作の眼目はサイレントからトーキーに変わる時の苦労をハイライトとした映画人苦労話である。
監督はデイミアン・チャゼルで、マーティン・スコセッシやクエンティン・タランティーノにも似て、力業で見せた感じが強く、ピット主演映画とマーゴット出演映画の撮影風景をめぐる長いクロス・カッティングは圧倒的である。(実は僕が嫌いな)カットを切らずにカメラを振るスタイルがここでは目立つが、それが一種の迫力を生んでいる。
序盤の酒池肉林パーティーも見応えがある。しかるに、汚い方の下ネタが多いのはアメリカ人の悪い癖で、印象が悪くて映画全体の評価をかなりマイナスにせざるを得ない。
最後の「雨に唄えば」のシークエンスで、まだ存在していない未来の映画もまじってコラージュされるところは、劇映画としてはデタラメかもしれないが、一種のフラッシュ・フォワードと考えれば問題にするに及ばない。
「グッドモーニング・バビロン!」は暫く観ていない。WOWOWにリクエストを受け付ける「あなたの映画館」というコーナーがある。これに当たってみようか。しかし、リクエストに必要な文章を考えるのが面倒くさい(笑)
2022年アメリカ映画 監督デイミアン・チャゼル
ネタバレあり
「イントレランス」(1916年)の製作を題材にした映画に「グッドモーニング・バビロン!」(1987年)という秀作があるが、その「イントレランス」が悪徳・退廃の町としたのが古代中東の大都市バビロンであり、それに喩えられるのが1920年代~30年代のハリウッドである。
サイレント末期の1926年くらいから始まり、芸能人や名士があつまる酒池肉林のパーティーでお披露目する象を連れる為にやってきたのがメキシコ人ディエゴ・カルバで、その結果、人気男優ブラッド・ピットの付き人のようになる。
同パーティーに押しかけた女優志願マーゴット・ロビーはパーティーに参加していた脇役女優がオーバードーズで亡くなったピンチヒッターに起用され、見事に役をこなす。
1927年に本格トーキー映画「ジャズ・シンガー」が公開されたことで、口跡の良くないピットは徐々に落ち目になり、「ハリウッド・レヴィユー」(「雨に唄えば」が初めて歌われたレヴュー映画)もどきの映画に無理やり担ぎ出されたりもする。
ピットを支えた能力が認められ彼の所属するMGMからキノスコープに抜擢されたカルバは同社の重役格になり、同社の人気女優になりかけたものの声や品の悪さから決定的人気を得られないマーゴットを大スターにしようと尽力するが、無軌道な彼女はその努力を水泡に帰したどころか、賭けで借金を負ってギャングに追われる羽目になる。
彼女を愛するカルバは知恵を絞るが、その為に自分が一人でLAを追われる羽目になる。その頃落ち目のピットは自殺、彼女は数年後に死亡する。
1952年に妻子を連れLAに戻ったサイレントからトーキーに移行する時代のドタバタを描いたミュージカル映画「雨に唄えば」を見ておよそ四半世紀前のことを思い出して感慨にふける。
ブラッド・ピットのモデルは「ハリウッド・レヴィユー」もどきの映画があることから1936年に心臓発作で亡くなったジョン・ギルバートだろう。
そして最後はお馴染み「ニュー・シネマ・パラダイス」風になるが、本作の眼目はサイレントからトーキーに変わる時の苦労をハイライトとした映画人苦労話である。
監督はデイミアン・チャゼルで、マーティン・スコセッシやクエンティン・タランティーノにも似て、力業で見せた感じが強く、ピット主演映画とマーゴット出演映画の撮影風景をめぐる長いクロス・カッティングは圧倒的である。(実は僕が嫌いな)カットを切らずにカメラを振るスタイルがここでは目立つが、それが一種の迫力を生んでいる。
序盤の酒池肉林パーティーも見応えがある。しかるに、汚い方の下ネタが多いのはアメリカ人の悪い癖で、印象が悪くて映画全体の評価をかなりマイナスにせざるを得ない。
最後の「雨に唄えば」のシークエンスで、まだ存在していない未来の映画もまじってコラージュされるところは、劇映画としてはデタラメかもしれないが、一種のフラッシュ・フォワードと考えれば問題にするに及ばない。
「グッドモーニング・バビロン!」は暫く観ていない。WOWOWにリクエストを受け付ける「あなたの映画館」というコーナーがある。これに当たってみようか。しかし、リクエストに必要な文章を考えるのが面倒くさい(笑)
この記事へのコメント
<考えれば問題にするに及ばない
全くそうですね。
この部分に到達するまでは、そのため
の前段でしかなかったような気がします!
>この部分に到達するまでは、そのための前段でしかなかったような気がします!
企画の早い段階で、幕切れのアイデアがあったのかもしれませんね。そこへもっていくためにどういう風に話を拵えるか、腐心したのかも。
トーキー移行期のハリウッド話、なかなか楽しく見ました。3時間超、それほど長く思わなかったので、おもしろかったほうだといえます。
マーゴットは好きなので…。最後のほうで、マリリンが出たのも高得点(笑)。
>同日に記事にするとは(見た日は違うのでしょうね)
毎日アップする都合上、常に5本前後の貯金を抱えているようにします。
事情があって観られない日もありますのでね。
>3時間超
全然問題なかったです。
汚らしいショットがなければ☆四つにしたでしょう。