映画評「メグレと若い女の死」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2022年フランス=ベルギー合作映画 監督パトリス・ルコント
ネタバレあり

僕より年上のミステリー・ファンには、ホームズ、ポワロに次ぐ有名探偵(公立探偵=刑事)メグレ警視の戦後作(1954年)をパトリス・ルコントが映画化した。
 僕がメグレを知ったのは、45年前愛川欽也が演じた日本版によってで、ホームズやポワロよりは大分遅れた。

若い女性(後にルイーズという名前と判明)の刺殺死体が発見され、メグレ警視(ジェラール・ドパルデュー)の登場となる。メグレは被害者が着ていた身分不相応のドレスから、彼女が暮らしていた場所や関係者を探り出して行く。
 その中に映画女優志願ジャニーヌ(メラニー・ベルニエ)がいて、名家の御曹司ローラン(ピエール・ムール)を婚約者にしている。彼はローランのフェティシズムを知って、逮捕したことのある地方出身の娘ベティ(ジャド・ラベスト)をルイーズに似せて、ジャニーヌとローランに罠を掛ける。

メグレの戦略は僕が今命名する「めまい」作戦。ニヤニヤする映画ファンも結構いるだろう。

本作は犯人当て(フーダニット型)ミステリーではなく、死の真相を探り出すもので、その過程で社会の非情とメグレの人情が浮かび上がる形である。特に若い女性に対する親が娘を見るような感情を描き出していくのが見どころのような気がする。

お話自体はTVの刑事ドラマの一挿話レベルかもしれないが、ルコントによる画面の佇まいは魅力がある。

ジャン・ギャバンに寄せた感もあるドパルデューのメグレが渋くて味わい深い。

そして僕はメグレに明け暮れる。

この記事へのコメント

お気に入りだけ観ていたい
2024年01月31日 19:19
オカピーさん、こんにちは。今年初のコメントになります。

シネコンが苦手で、すっかり劇場から遠ざかっていた私ですが、
ルコント×ドパルデューの組合わせと知り、久々に劇場に足を運びました。

ルコントは好きな作家で、同じシムノン原作の「仕立て屋の恋」がお気に入りなので、期待が大きすぎたのか、若干物足りなさを感じました。

ご指摘の通り「お話自体はTVの刑事ドラマの一挿話レベル」のためかなと。

しかし、ドパルデューの演技、画面構成は気に入っていて、
DVDで2度3度と見直すうちに、自分の中で少し評価が上がってきました。

捜査が進むのと共に徐々に浮かび上がってくる、過去に娘を亡くした悲しみ。

パイプなどの小道具の扱いなど、さすがルコントと言いたい味わい深い作品で

あらためて、観てよかったなと思った次第です。

オカピー
2024年01月31日 21:53
お気に入りだけ観ていたいさん、お久しぶりです。

>シネコンが苦手で、すっかり劇場から遠ざかっていた私ですが、

右に同じです。
病気をしてから、映画館に行くこと自体が減りましたが。

>シムノン

現在の日本での知名度は解りませんが、日本ではごく初期(1930年代)から紹介され、本格推理作家同様に高い人気があったようですね。

>ドパルデューの演技、画面構成は気に入っていて

これは全く仰る通りで、ルコントの画面は映画的な魅力に富んでいますし、ドパルデューも渋くて素敵でした。