映画評「犬は食わねどチャーリーは笑う」

☆☆★(5点/10点満点中)
2022年日本映画 監督・市井昌秀
ネタバレあり

ホーム・コメディー。もっと細かく言えば夫婦コメディー。

ホームセンターで副店長をしている香取慎吾が、お客だった妙齢女性・岸井ゆきのと意気投合して結婚する。
 4年後、コールセンターに勤務している彼女はこっそりSNS【旦那デスノート】に投稿するうち一番人気となり、彼女を中心として単行本化の企画が持ち上がる。単なる欲求不満のはけ口のつもりだから彼女としては逡巡せざるを得ないが、彼の方は、彼の同僚である壮年女性社員・余貴美子との関係から、彼女が喜んで彼に見せたチャーリーなる投稿者が自分の妻と知ってショックを受ける。チャーリーは二人が可愛がっているふくろうの名前でもある。
 二人は、部下・井之脇海の披露宴における主人呼応のスピーチをゆきのちゃんがサポートしてくれたことから初心を取り戻すが、彼の母親・浅田美代子が知らない筈の流産のことを口にしたことから元の木阿弥となる。
 これに納得いかないと同時に自分にも忸怩たる思いのある彼は、勤務先に乗り込んで、犬も食わない夫婦喧嘩をした末に二人は笑い出し、結婚前にしたように外に浮遊するスーパーの袋を落ちる前に捕ろうと駆け出す。

結婚式後に二人が和解する気になるところまでは布石の積み重ねも良く楽しめるものの、再び波が立ってからは大仰になって僕は好かない。かつてハリウッド映画に多かった展開と思うが、カップルの片方がパートナーの職場なりに駆け込むという形はどう見せても大仰になってどうも鼻白む。ハリウッド製を含めてうまく行った例を僕は思い出せない。ヒロインの上司への反抗が皆の共感を呼んで騒ぎ出すのも定石的に過ぎる。
 幕切れのスーパー袋を追いかけるという流れは結婚前のエピソードの繰り返しで、それ自体は悪くないが、もう少しシンプルに見せたほうが好印象に繋がる。旦那の筋トレを生かすアイデアだったのかもしれないが。

タイトルは、【夫婦喧嘩は犬も食わない】と【武士は食わねど高楊枝】のミックス。

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