映画評「不良青年」
☆☆★(5点/10点満点中)
1936年フランス=ドイツ合作映画 監督ジャン・ボワイエ
ネタバレあり
フランス流のセミ・ミュージカル。
大学の法科を卒業して弁護士になることを希望する令嬢ダニエル・ダリューが、どうしても自分を結婚させたがっている父親アンドレ・アレルムと、1年半後に成功しなければ結婚すると、約す。
父親は事務所を提供し、女中を秘書に付ける。彼女の期待に反して16か月の間全く依頼が入って来ないが、猶予期限の1か月前になって、取り込み詐欺犯アンリ・ギャラの国選弁護人の仕事が舞い込む。彼女の奮闘の甲斐があって審理前に釈放が決定されたのは良いが、自由になっても仕事がないのでは困るということで、住居兼事務所の雑事を宛がう。
結局その後も依頼はないうちに猶予期限がやって来る。
そこで父親が連れて来た婿候補が・・・というお話で、中盤ギャラが現れた瞬間に予想されたような結末を迎えるが、ちょっとしたどんでん返しになっていてなかなか洒落ている。
1930年代のアメリカ映画は、現在のポリ・コレ映画に似て、現実以上の男女平等の社会を映画の中で見せていた。本作はそれをフランス映画界が借用したような内容で、ちょっとしたミュージカル仕立てに仕立ててお笑いをてんこ盛りにしている為に、同時代のハリウッド映画に似たムードを漂わす。
お話自体は他愛ないコメディーで、父と娘の対立から大団円まで概ね型通りで大して面白味はないが、ダニエル・ダリューの可憐な弁護士ぶりが大いに良い。
とりわけ気に入ったのは、ギャラが再び犯罪を起こすことを計画していると聞いた彼女がクラブへ行って結局ギャラとダンスを始める場面で、寄りからロングショットになってブラック・アウトという見せ方もムード満点で素敵だった。
歌は専らこのカップルに限られる。ダニエル・ダリューが実際に歌っているかどうか定かではないが、2002年のフランス製ミュージカル「8人の女たち」にも出ていたことを考えると、その辺りの才能もあったのかもしれない。
この時代の限界で、社会進出する女性も結局は好きな相手が見つかれば仕事を放りだすことに未練は見せない。現在なら間違いなく、仕事も結婚も両立というハッピーエンドになる。
ダニエル・ダリューは戦前日本で大人気だった。この間読んだ歌集にも彼女の名前が出て来た。
1936年フランス=ドイツ合作映画 監督ジャン・ボワイエ
ネタバレあり
フランス流のセミ・ミュージカル。
大学の法科を卒業して弁護士になることを希望する令嬢ダニエル・ダリューが、どうしても自分を結婚させたがっている父親アンドレ・アレルムと、1年半後に成功しなければ結婚すると、約す。
父親は事務所を提供し、女中を秘書に付ける。彼女の期待に反して16か月の間全く依頼が入って来ないが、猶予期限の1か月前になって、取り込み詐欺犯アンリ・ギャラの国選弁護人の仕事が舞い込む。彼女の奮闘の甲斐があって審理前に釈放が決定されたのは良いが、自由になっても仕事がないのでは困るということで、住居兼事務所の雑事を宛がう。
結局その後も依頼はないうちに猶予期限がやって来る。
そこで父親が連れて来た婿候補が・・・というお話で、中盤ギャラが現れた瞬間に予想されたような結末を迎えるが、ちょっとしたどんでん返しになっていてなかなか洒落ている。
1930年代のアメリカ映画は、現在のポリ・コレ映画に似て、現実以上の男女平等の社会を映画の中で見せていた。本作はそれをフランス映画界が借用したような内容で、ちょっとしたミュージカル仕立てに仕立ててお笑いをてんこ盛りにしている為に、同時代のハリウッド映画に似たムードを漂わす。
お話自体は他愛ないコメディーで、父と娘の対立から大団円まで概ね型通りで大して面白味はないが、ダニエル・ダリューの可憐な弁護士ぶりが大いに良い。
とりわけ気に入ったのは、ギャラが再び犯罪を起こすことを計画していると聞いた彼女がクラブへ行って結局ギャラとダンスを始める場面で、寄りからロングショットになってブラック・アウトという見せ方もムード満点で素敵だった。
歌は専らこのカップルに限られる。ダニエル・ダリューが実際に歌っているかどうか定かではないが、2002年のフランス製ミュージカル「8人の女たち」にも出ていたことを考えると、その辺りの才能もあったのかもしれない。
この時代の限界で、社会進出する女性も結局は好きな相手が見つかれば仕事を放りだすことに未練は見せない。現在なら間違いなく、仕事も結婚も両立というハッピーエンドになる。
ダニエル・ダリューは戦前日本で大人気だった。この間読んだ歌集にも彼女の名前が出て来た。
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