映画評「妖星ゴラス」
☆☆(4点/10点満点中)
1962年日本映画 監督・本多猪四郎
ネタバレあり
1998年製作の「アルマゲドン」「ディープ・インパクト」より35年も前に星による地球衝突危機SFを作ったとは、日本映画もなかなかやるわいとごキゲンになっていたが、よく考えると本作より10年前に「地球最後の日」というそもそもの発想が同種のアメリカ映画があったのを思い出し、苦笑した。
今回の星は小惑星などではなく、黒色矮星(恒星)。要はブラックホールに近い存在である。地球より僅かに小さいが、質量は約6000倍(最終的に6200倍)で、近づくと引力により地球の火山や海などに大きな影響を与える。
時代設定は1979年、今から40年以上も昔であるが、当時は(特別の装置なしに)有人ロケットで土星まで行けると思っていたらしい。お隣さんの火星は実際に可能性が高まっているが、土星はその7倍も遠いし、ガスの惑星を探査しても得るものはなさそうな気がする。
それはともかく、土星探査に向かった宇宙船・隼号が、ゴラスという黒色矮星が地球に衝突する軌道にあるから調査せよと言われるが、情報を得たものの、最終的にゴラスに吞み込まれる。
その船長(田崎潤)の娘・白川由美は父親が旅立ったこと、死んだことに気付くのが他の人より遅いという粗忽者。
実際には原作者・丘美丈次郎か脚色した木村武がそそっかしいのであるが、こういうところが当時の東宝特撮映画はしっかりしていない。
その代わりにSF的にはかなり本格的で、同じ原作者の「宇宙大戦争」より地味であるのが却って買え、★一つ分くらい余分に進呈できそうだとニコニコしていたら、途中で用もないのに(恐らく子供を意識して)セイウチ型恐竜を出してきてがっかり。
「アルマゲドン」とは違って星を爆発するという作戦(を取ろうとするが対象が余りに巨大で無理と判り)ではなく、地球の軌道を変えるというアイデアがSF的に面白い。南極にロケット推進に使うジェットパイプ(の巨大版)の基地を作ってその勢いで軌道をずらすというわけで、現実的か否かはともかく、実に興味深いではないか。
基本的に登場人物は楽観的で、この辺りは、他に仰る人もいるように、オリンピック開催を決め高度経済成長に湧いていた当時の日本のムードをよく反映している。「宇宙大戦争」同様地球の為には冷戦構造を忘れて各国が手を取り合って活動する。これは定石的だが、楽観的・理想主義的とまでは言えない。
ほぼ全てのSFX映画と違って、地球がピンチに陥っても敵対国が相変わらず協力しないことを見せたブラック・コメディーがあったが、タイトルが出て来ない。
因みに、劇中での “死火山の富士山” という発言は明らかな間違い。僕等の子供の頃は ”死火山” もしくは “休火山”(僕はこちらで憶えていた)と言われ、現在は活火山になっている(当然でありましょう)。とにかく、休火山ならともかく、死火山は大いなる間違い。
昨晩テレビ朝日でタモリが富士山に登っていた。僅か300年前の江戸中期に爆発したのが解っているのに、当時は何故死火山と言っていたのかな。同じテレビ朝日の池上彰の番組で、彼と出演者の高畑淳子がこれに言及していた。僕が持っていたその時代の地図帳には、富士山は赤の▲で記されていた。これは死火山を意味しないのだが。
1962年日本映画 監督・本多猪四郎
ネタバレあり
1998年製作の「アルマゲドン」「ディープ・インパクト」より35年も前に星による地球衝突危機SFを作ったとは、日本映画もなかなかやるわいとごキゲンになっていたが、よく考えると本作より10年前に「地球最後の日」というそもそもの発想が同種のアメリカ映画があったのを思い出し、苦笑した。
今回の星は小惑星などではなく、黒色矮星(恒星)。要はブラックホールに近い存在である。地球より僅かに小さいが、質量は約6000倍(最終的に6200倍)で、近づくと引力により地球の火山や海などに大きな影響を与える。
時代設定は1979年、今から40年以上も昔であるが、当時は(特別の装置なしに)有人ロケットで土星まで行けると思っていたらしい。お隣さんの火星は実際に可能性が高まっているが、土星はその7倍も遠いし、ガスの惑星を探査しても得るものはなさそうな気がする。
それはともかく、土星探査に向かった宇宙船・隼号が、ゴラスという黒色矮星が地球に衝突する軌道にあるから調査せよと言われるが、情報を得たものの、最終的にゴラスに吞み込まれる。
その船長(田崎潤)の娘・白川由美は父親が旅立ったこと、死んだことに気付くのが他の人より遅いという粗忽者。
実際には原作者・丘美丈次郎か脚色した木村武がそそっかしいのであるが、こういうところが当時の東宝特撮映画はしっかりしていない。
その代わりにSF的にはかなり本格的で、同じ原作者の「宇宙大戦争」より地味であるのが却って買え、★一つ分くらい余分に進呈できそうだとニコニコしていたら、途中で用もないのに(恐らく子供を意識して)セイウチ型恐竜を出してきてがっかり。
「アルマゲドン」とは違って星を爆発するという作戦(を取ろうとするが対象が余りに巨大で無理と判り)ではなく、地球の軌道を変えるというアイデアがSF的に面白い。南極にロケット推進に使うジェットパイプ(の巨大版)の基地を作ってその勢いで軌道をずらすというわけで、現実的か否かはともかく、実に興味深いではないか。
基本的に登場人物は楽観的で、この辺りは、他に仰る人もいるように、オリンピック開催を決め高度経済成長に湧いていた当時の日本のムードをよく反映している。「宇宙大戦争」同様地球の為には冷戦構造を忘れて各国が手を取り合って活動する。これは定石的だが、楽観的・理想主義的とまでは言えない。
ほぼ全てのSFX映画と違って、地球がピンチに陥っても敵対国が相変わらず協力しないことを見せたブラック・コメディーがあったが、タイトルが出て来ない。
因みに、劇中での “死火山の富士山” という発言は明らかな間違い。僕等の子供の頃は ”死火山” もしくは “休火山”(僕はこちらで憶えていた)と言われ、現在は活火山になっている(当然でありましょう)。とにかく、休火山ならともかく、死火山は大いなる間違い。
昨晩テレビ朝日でタモリが富士山に登っていた。僅か300年前の江戸中期に爆発したのが解っているのに、当時は何故死火山と言っていたのかな。同じテレビ朝日の池上彰の番組で、彼と出演者の高畑淳子がこれに言及していた。僕が持っていたその時代の地図帳には、富士山は赤の▲で記されていた。これは死火山を意味しないのだが。
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