映画評「マネーボーイズ」
☆☆★(5点/10点満点中)
2021年フランス=ベルギー=オーストリア=台湾合作映画 監督C・B・リー
ネタバレあり
同性愛者の、特に男性同性愛者の肉体的絡みが出て来る映画は苦手なので近年避けて来たが、中国が舞台というので観てみた。舞台は本土かもしれないが、撮影は恐らく監督C・B・リーの出身地にちがいない台湾で行われたのだろう。中国が一切絡んでいないのは、クレジットの繁体字を見れば一目瞭然。
地方出身の若者フェン(カイ・コー)は実家に仕送りする為に男性相手の男娼をしているが、男性の恋人シャオレイ(J・C・リン)が自分を庇って足に重傷を負った後関係が切れて、別の男性と同居している。
訳あって実家に帰れば、事情に気付いている家族ではなく近隣の年寄連中から結婚の強い勧めがあって嫌気が差し、母の墓参の後都会に戻る。
彼を慕う地元の後輩ロン(バイ・ユーファン)が出て来てフェンの周りをうろつくうちに、次第に恋人関係のようになる。フェンは、妻(クロエ・マーヤン)との間に三人の子供を設けているシャオレイと再会し、彼への思いの断てないことを確認するが、シャオレイとの関係はもはやどうにもならず、ロンも去って行く。
というお話で、絡みもある男性同性愛者の映画では「ブロークバック・マウンテン」(2005年)という秀作があるが、あの作品はアン・リーの画面感覚が圧倒的に素晴らしく、場面の捌きも見事であった為に、異性愛・同性愛という範疇を越える、純粋に人間関係の問題を透かしてみせ、大いに感動させてくれた。
この映画はまだまだその境地に遠く、とりわけ似たような年齢層の似たような体形の男性が4人もお話に絡んでいる為、誰が何を言っているのかも把握しにくい。何分中国語を解さず字幕に頼らざるを得ないから尚更。
クラブでの踊りで終わるラスト・シーンが時間的にいつなのか不明でモヤモヤ。モヤモヤさせるのが目的の一つではあるだろうけれど、モヤモヤさせるのも目的と思わせるムードを発揮しきれていないような気がする。
実家のある田舎での描写はムードよろし。
その他、後半男女6人くらいの飲食の場でカメラがゆっくり円弧を描くように右へ左へ移動するカメラが印象深い。師匠のミヒャエル・ハネケはこんな見せ方をしたっけ?
この映画を観て思い出す人が大いに違いないウォン・カーウァイ監督「ブエノスアイレス」は苦手。これでこの手の作品への苦手意識が芽生えた。
2021年フランス=ベルギー=オーストリア=台湾合作映画 監督C・B・リー
ネタバレあり
同性愛者の、特に男性同性愛者の肉体的絡みが出て来る映画は苦手なので近年避けて来たが、中国が舞台というので観てみた。舞台は本土かもしれないが、撮影は恐らく監督C・B・リーの出身地にちがいない台湾で行われたのだろう。中国が一切絡んでいないのは、クレジットの繁体字を見れば一目瞭然。
地方出身の若者フェン(カイ・コー)は実家に仕送りする為に男性相手の男娼をしているが、男性の恋人シャオレイ(J・C・リン)が自分を庇って足に重傷を負った後関係が切れて、別の男性と同居している。
訳あって実家に帰れば、事情に気付いている家族ではなく近隣の年寄連中から結婚の強い勧めがあって嫌気が差し、母の墓参の後都会に戻る。
彼を慕う地元の後輩ロン(バイ・ユーファン)が出て来てフェンの周りをうろつくうちに、次第に恋人関係のようになる。フェンは、妻(クロエ・マーヤン)との間に三人の子供を設けているシャオレイと再会し、彼への思いの断てないことを確認するが、シャオレイとの関係はもはやどうにもならず、ロンも去って行く。
というお話で、絡みもある男性同性愛者の映画では「ブロークバック・マウンテン」(2005年)という秀作があるが、あの作品はアン・リーの画面感覚が圧倒的に素晴らしく、場面の捌きも見事であった為に、異性愛・同性愛という範疇を越える、純粋に人間関係の問題を透かしてみせ、大いに感動させてくれた。
この映画はまだまだその境地に遠く、とりわけ似たような年齢層の似たような体形の男性が4人もお話に絡んでいる為、誰が何を言っているのかも把握しにくい。何分中国語を解さず字幕に頼らざるを得ないから尚更。
クラブでの踊りで終わるラスト・シーンが時間的にいつなのか不明でモヤモヤ。モヤモヤさせるのが目的の一つではあるだろうけれど、モヤモヤさせるのも目的と思わせるムードを発揮しきれていないような気がする。
実家のある田舎での描写はムードよろし。
その他、後半男女6人くらいの飲食の場でカメラがゆっくり円弧を描くように右へ左へ移動するカメラが印象深い。師匠のミヒャエル・ハネケはこんな見せ方をしたっけ?
この映画を観て思い出す人が大いに違いないウォン・カーウァイ監督「ブエノスアイレス」は苦手。これでこの手の作品への苦手意識が芽生えた。
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