映画評「緯度0大作戦」

☆☆★(5点/10点満点中)
1969年日本=アメリカ合作映画 監督・本多猪四郎
ネタバレあり

日本(東宝)とアメリカの合作SF冒険映画である。
 ジュール・ヴェルヌ原作の「海底2万哩」(1954年)をもう少し下品にしたような感じと思えば、中(当)らずと雖も遠からず。

海流を調査していた海洋学者の宝田明、岡田真澄、記者リチャード・ジャッケルが遭難するが、何者かの潜水艦に救助される。それは地下20000mにあるユートピアたる地下基地のもので、そこは地上より遥かに文明が進み、艦長ジョセフ・コットンは200歳を超えると言う。地上から失踪などした優れた学者たちこの基地で働いている。
 彼らの努力で蘇生した三人は、このユートピアが仇敵シーザー・ロメロに常時攻撃を仕掛けられていること、彼がコットンの招聘したノーベル賞受賞の中村哲とその娘・中山麻理を拉致したことを知り、コットンらと共に奪還すべく、ロメロの根拠地であるブラッドロック島へ向かう。
 ロメロはマッド・サイエンティストで、人間を攻撃型怪獣に変えるなどして刃向うが、幹部であった愛人・黒木ひかるの脳を移植した翼を持つ獅子グリホンに逆襲されて、呆気なく滅びる。

この作品で一番馬鹿らしいのは、ノーベル賞学者拉致に成功した愛人を褒めるどころかその脳を獅子に鷲の羽を付けた怪獣に移植するというアイデアである。天才を自称する彼は人間の心理というものに全く疎かったらしい。裏切られた相手が敵ではなく自分に向かってくるなど小学生にも解るだろうに。
 この辺りのグロテスクさが「海底二万哩」より怪作という印象を醸成する所以で、「ターザン」シリーズで有名なエドガー・ライス・バローズの「火星」シリーズに交換頭脳の話が出てきたのを思い出した。

地下基地での合成はなかなかよく出来ていて、SFX時代のSFらしい楽しさが満点。
 それに比べると、マッド・サイエンティストの作ったグリホン、大ネズミ、コウモリ人間などは着ぐるみで、当時のレベルとしても褒めたくなる出来栄えではないものの、元来高級スペクタクルを求めているとは思えないこの手は拙くても無邪気に楽しんだ方が良い気がする。

因みに、グリホン(グリフォン)は西洋伝説の怪獣で、基本的に電気楽器を使わず、まるで中世音楽のような演奏をする(特に第一作で顕著)プログレッシヴ・ロック・バンドがバンド名にしている。アルバム2枚所有。

この記事へのコメント

2023年12月02日 09:29
WOWOWの本多監督作品集、私も見ましたが、あーこんなもんかの感想でした…。
本作は、ジョセフ・コットンが出ているので驚き(マリリン・ファンには「ナイアガラ」により特別な存在ですから)。ギャラがよかったのかしらん。
まあ、当時の技術を今に照らして批評しても…とは思うのですが、思うものはしょうがない…。
オカピー
2023年12月02日 19:53
ボーさん、こんにちは。

>WOWOWの本多監督作品集

東宝ももとい当方も、全部観ました。

>本作は、ジョセフ・コットンが出ているので驚き

合作映画と知らずに観て、僕もビックリしました。
シーザー・ロメロも出ているので結構豪華です。