映画評「MEMORY メモリー」

☆☆★(5点/10点満点中)
2022年アメリカ映画 監督マーティン・キャンベル
ネタバレあり

日本では劇場公開されなかったベルギー映画「ザ・ヒットマン」(2003年)のリメイク。

FBIで児童性虐待を担当している捜査官ガイ・ピアースは、メキシコ人グループによる虐待の実態を掴む為に捜査中に重要な証言者になるはずだった男を死に至らしめ、その娘である少女を保護して施設に収監する。
 初老の殺し屋リーアム・ニースンはクールに仕事をこなしていたが、その少女を殺せという命令に苛立ち、その少女が別の殺し屋に殺された後、アルツハイマーで先の長くない命と開き直って、グループの関係者を次々と殺害していく。
 ピアースは虐待事件の捜査をしつつ、それと関連のあるグループ関係者殺人事件の犯人を挙げようとする。

ピアースの行動とニースンの行動と女親分モニカ・ベルッチが統率するグループの動向、ニースンによる殺しと別の殺し屋の殺しが入り混じる前半は要領を得ない感じが強く、多くの方がここで退屈するのではないかと想像する。
 ピアースの捜査内容とニースンの殺害動機がはっきりする中盤以降徐々に整ってきて面白味が増すが、多くの方にはお勧めしかねる感じが強い。

殺し屋がアルツハイマーを患っているという着想は良いと思うが、それが展開に余り生きて来ない。最後に証拠品のフラッシュ・メモリー(題名はこれと人間の記憶との掛詞になっている)の隠し場所を思い出せずに苦労するというところでやや絡むが、面白味が出ているとまでは言えない。

幕切れで、同僚の女性捜査員タジ・アトウォルがピアースを酒場に誘い出し、その時刻に起こる事件のアリバイ作りをしてあげるというアイデアは味があって良いと思う。

007/カジノ・ロワイヤル」で名を上げたマーティン・キャンベルは良い脚本に当たればもっときちんと見せてくれるはず。本作は脚本が力不足だったと思う。

ドラマ系の役者だったニースンが「96時間」ヒットでアクション映画俳優に変わった。本作もその流れの一本だが、そろそろ手詰まりという感じがしますぞ。

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