映画評「オマージュ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2021年韓国映画 監督シン・スウォン
ネタバレあり

韓国の女性映画人絡みの作品に「チャンシルさんは福が多いね」という女性監督による作品があるが、こちらも女性監督シン・スウォンによる女性監督の映画。

作る作品は尽くヒットせず、3作目にして行き詰りを覚えている女性監督ジワン(イ・ジョンウン)が、国立の映画機関から、3作で映画作りを止めた半世紀前に女性監督ホン・ジェウォン=ホン・ウソン(実在名)の「女判事」(1962年)の修復を頼まれる。音声の欠落した部分を復元する仕事であるが、その為に関係者を歴訪して、やっと手に入れたシナリオと照らし合わせていくと、欠落した場面が欠けていることに気付く。
 半世紀前に彼女たちがたむろしていた喫茶店を訪れた結果、監督と仕事をしたことのある女性編集者イ・オッキ(イ・ジュシル)が地方に生きていることを確認する。
 そして、かつて「女判事」を上映した、天井も一部崩れているおんぼろ映画館の映写室の帽子群から「女判事」の散逸したフィルムを発見、オッキおばさんと一緒に繋ぎ合わせる。

全体的にのんびりしているのが良い。ユーモラスな描写もあるが、大衆映画と違ってそこはかとなく笑いが醸成されるのが一味違う。大衆映画もこういう風に作れば良いのよ。

フィルムを発見するまでがミステリー的に面白いが、その喜びをオッキおばさんと共有する終盤の場面が映画ファンとしては嬉しい。
 シン監督が女性映画監督のパイオニアにオマージュを捧げた作品であることは一目瞭然だが、この幕切れの場面を見ると、映画監督というより編集者を含む女性映画人の先達へのオマージュを感じるのである。二人の仕事が終った時僕は思わず拍手しましたよ。

ヒロインは夫と高校生の息子がいて、彼らとの私生活も描出されているのがこの手の映画では珍しいが、日本以上に儒教原理国である韓国の女性映画人を描くことは即ちフェミニズム映画にならざるを得ない。フェミニズム映画も臭くならなければ悪いとは思わないわけで、この映画くらいであれば微笑ましい範疇に収まる。

採点はほどほどに留めたが、全部とは言えずとも一部の映画ファンの胸を打つだろう。

昔「イマージュ」というポルノがありましたね。

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