映画評「丘の上の本屋さん」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2021年イタリア映画 監督クラウディオ・ロッシ・マッシミ
ネタバレあり
現代のイタリア。丘の村にある古書店の主人リベロ(レモ・ジローネ)が、ふと現れたブルキナファソからの移民少年エシエン(ディディ・ローレンツ・チュンブ)に漫画の本を貸したことから交流が始まり、やがて老人は古今の名作を手渡していく。少年が、老人が一番大切であると告げた最後の本を返しに来た時、彼の死の為に古書店は閉店となっている。
というお話で、本好きの僕には「イソップ物語」「白鯨」「アンクル・トムの小屋」「星の王子さま」などお馴染みの作品群にニコニコしてしまうのだが、主人公のリベロという名前が暗示するように、最後に出て来るのは「世界人権宣言」である。
主人公は名前が示すように【自由】のメタファーであったわけだが、最後に出て来るのが「世界人権宣言」とは余りに直球過ぎて却って味気ない。
勿論、人権は大事(表現の自由に人の悪口は含んではいけないから、これを根拠にした誹謗中傷はもってのほか)で、中でも読みたいものが自由に読める権利は大切なわけだが、もっと豊潤な映画的表現のうちに処理しないと良い映画とは言い難い。
少年の他に、隣のカフェの店員(コッラード・フォルトゥーナ)やその恋人になりそうなキアラ(アンナマリア・フィッティパルディ)、教授や神父など複数回登場する人々や、一期一会の来客が入れ代わり立ち代わり出て来て群像劇の様相を呈す。その人物たちがかくも自由な発言ができるのは思想の自由、表現の自由が保障されているからである。
しかし、人物の出入り、とりわけ重要な少年の登場の仕方に一呼吸なく、ぶっきらぼうな印象があるのが残念。
総じて不満の多い作品の割に水準以上とするのは、老人と少年の素朴な交流のほのぼのとしたムードのおかげと知られよ。
メッセージの価値=映画の価値にあらず。
2021年イタリア映画 監督クラウディオ・ロッシ・マッシミ
ネタバレあり
現代のイタリア。丘の村にある古書店の主人リベロ(レモ・ジローネ)が、ふと現れたブルキナファソからの移民少年エシエン(ディディ・ローレンツ・チュンブ)に漫画の本を貸したことから交流が始まり、やがて老人は古今の名作を手渡していく。少年が、老人が一番大切であると告げた最後の本を返しに来た時、彼の死の為に古書店は閉店となっている。
というお話で、本好きの僕には「イソップ物語」「白鯨」「アンクル・トムの小屋」「星の王子さま」などお馴染みの作品群にニコニコしてしまうのだが、主人公のリベロという名前が暗示するように、最後に出て来るのは「世界人権宣言」である。
主人公は名前が示すように【自由】のメタファーであったわけだが、最後に出て来るのが「世界人権宣言」とは余りに直球過ぎて却って味気ない。
勿論、人権は大事(表現の自由に人の悪口は含んではいけないから、これを根拠にした誹謗中傷はもってのほか)で、中でも読みたいものが自由に読める権利は大切なわけだが、もっと豊潤な映画的表現のうちに処理しないと良い映画とは言い難い。
少年の他に、隣のカフェの店員(コッラード・フォルトゥーナ)やその恋人になりそうなキアラ(アンナマリア・フィッティパルディ)、教授や神父など複数回登場する人々や、一期一会の来客が入れ代わり立ち代わり出て来て群像劇の様相を呈す。その人物たちがかくも自由な発言ができるのは思想の自由、表現の自由が保障されているからである。
しかし、人物の出入り、とりわけ重要な少年の登場の仕方に一呼吸なく、ぶっきらぼうな印象があるのが残念。
総じて不満の多い作品の割に水準以上とするのは、老人と少年の素朴な交流のほのぼのとしたムードのおかげと知られよ。
メッセージの価値=映画の価値にあらず。
この記事へのコメント
淡々としているのが、リアルな日常を感じさせるプラスの効果もあったと思いました。
>今の時代
世界的に、独裁的な人物が多く台頭し、全体主義への傾向が出て来たのを作者は危惧し、こういう作品を作ったのでしょうね。僕も危惧しています。