映画評「ファミリア」
☆☆★(5点/10点満点中)
2023年日本映画 監督・成島出
ネタバレあり
日本版「グラン・トリノ」という分析は中らずと雖も遠からず、だろう。
地方都市で碌にお金にもならない焼き物を拵えている初老男性・役所広司が、派遣先のアルジェリアから現地人の妻アリまらい果を連れて一時帰郷した息子・吉沢亮を迎える。彼はプラントの完成次第陶芸業を継ごうと言い出す。父親はこれには反対するが、ここに家族を作るという息子夫婦の思いにはぐっと来ているにちがいない。
そんな折に、ブラジル人団地の青年サガエ・ルカスが半グレ連中から避難して来る。翌日ガールフレンドのワケド・ファジレが迷惑をかけたことを謝らせに彼を連れて来て、役所とこの二人との交流が始まる。
息子夫婦は帰国して間もなくテロ・グループによって人質になる。役所は金をかき集めて官僚と交渉するが、近年の先進国ではテロリストとの交渉はしないという建前に従って動こうとせず、やがて夫婦共々流れ弾により死んだという報告がやって来る。
がっかりする間もなく、ブラジル人のカップルも借金を理由に半グレ・グループの追及に困っている様子で彼の家に駆け込んでくる。役所はグループの一員をとっちめて証言を得ると、ボスMIYAVIのいる事務所へ交渉しに出かける。案の定逆襲されるが、事前の打ち合わせ通り、幼馴染の刑事・佐藤浩市率いる警察が駆け付け一味を一網打尽とする。
1か月後ブラジル人のカップルが退院したばかりの役所を訪れ、弟子として師事する。
二つの実際に起きた事件が着想源のようである。一つは言うまでもなく2013年アルジェリアのプラントで起きた人質事件、もう一つは母と幼児が高齢者の運転する車にひき殺された事件である。
前者はほぼ実際に近いが、後者はブラジル人グループのバスが突っ込んだことに変えられた形。これが半グレ連中のボスがブラジル人を敵視する理由になっているという設定である。
「グラン・トリノ」同様に妻に先立たれて外国人(あちらは正規の移民だった)と疑似親子関係を築く点で共通する。あちらの息子は生きているが疎遠、こちらは殺害される。
“息子のエピソードは要らない”というコメントを映画サイトで読んで、吃驚した。具体的なエピソードのことなのか、あるいは息子夫婦全てなのか解らないが、後者であれば勘の悪いこと甚だしい。
何となれば、この映画は、主人公が死んだ息子夫婦の代りにブラジル人カップルを疑似息子夫婦にするまでを見せたかった筈であるからである。逆に言えば、普通の勘を持つ人なら、息子夫婦の死が判明した瞬間に映画の落着の見当がついてしまう。
話がうまく進まなくなりかねないが、役所が懸命に集めて無駄に終わった大金の一部をブラジル人に渡して使って貰うというアイデアはなかったろうか? 勿論ヤクザとつるんでいる金持ち半グレは金を貰っても、基本的にブラジル人を虐めるのが目的だから、迫害は続くだろうが、それを受けて現状のような幕切れに持って行く手もあった。
最後の役所のイチかバチかの作戦は無謀すぎかつ無理がある気がするが、昔はヤンチャ(多分孤児)だったという設定が生きるアイデアではある。
序盤をもうちょっと要領良く作っていれば★一つ分くらい増えたかもしれない。
ファミリアと言えばマツダです。
2023年日本映画 監督・成島出
ネタバレあり
日本版「グラン・トリノ」という分析は中らずと雖も遠からず、だろう。
地方都市で碌にお金にもならない焼き物を拵えている初老男性・役所広司が、派遣先のアルジェリアから現地人の妻アリまらい果を連れて一時帰郷した息子・吉沢亮を迎える。彼はプラントの完成次第陶芸業を継ごうと言い出す。父親はこれには反対するが、ここに家族を作るという息子夫婦の思いにはぐっと来ているにちがいない。
そんな折に、ブラジル人団地の青年サガエ・ルカスが半グレ連中から避難して来る。翌日ガールフレンドのワケド・ファジレが迷惑をかけたことを謝らせに彼を連れて来て、役所とこの二人との交流が始まる。
息子夫婦は帰国して間もなくテロ・グループによって人質になる。役所は金をかき集めて官僚と交渉するが、近年の先進国ではテロリストとの交渉はしないという建前に従って動こうとせず、やがて夫婦共々流れ弾により死んだという報告がやって来る。
がっかりする間もなく、ブラジル人のカップルも借金を理由に半グレ・グループの追及に困っている様子で彼の家に駆け込んでくる。役所はグループの一員をとっちめて証言を得ると、ボスMIYAVIのいる事務所へ交渉しに出かける。案の定逆襲されるが、事前の打ち合わせ通り、幼馴染の刑事・佐藤浩市率いる警察が駆け付け一味を一網打尽とする。
1か月後ブラジル人のカップルが退院したばかりの役所を訪れ、弟子として師事する。
二つの実際に起きた事件が着想源のようである。一つは言うまでもなく2013年アルジェリアのプラントで起きた人質事件、もう一つは母と幼児が高齢者の運転する車にひき殺された事件である。
前者はほぼ実際に近いが、後者はブラジル人グループのバスが突っ込んだことに変えられた形。これが半グレ連中のボスがブラジル人を敵視する理由になっているという設定である。
「グラン・トリノ」同様に妻に先立たれて外国人(あちらは正規の移民だった)と疑似親子関係を築く点で共通する。あちらの息子は生きているが疎遠、こちらは殺害される。
“息子のエピソードは要らない”というコメントを映画サイトで読んで、吃驚した。具体的なエピソードのことなのか、あるいは息子夫婦全てなのか解らないが、後者であれば勘の悪いこと甚だしい。
何となれば、この映画は、主人公が死んだ息子夫婦の代りにブラジル人カップルを疑似息子夫婦にするまでを見せたかった筈であるからである。逆に言えば、普通の勘を持つ人なら、息子夫婦の死が判明した瞬間に映画の落着の見当がついてしまう。
話がうまく進まなくなりかねないが、役所が懸命に集めて無駄に終わった大金の一部をブラジル人に渡して使って貰うというアイデアはなかったろうか? 勿論ヤクザとつるんでいる金持ち半グレは金を貰っても、基本的にブラジル人を虐めるのが目的だから、迫害は続くだろうが、それを受けて現状のような幕切れに持って行く手もあった。
最後の役所のイチかバチかの作戦は無謀すぎかつ無理がある気がするが、昔はヤンチャ(多分孤児)だったという設定が生きるアイデアではある。
序盤をもうちょっと要領良く作っていれば★一つ分くらい増えたかもしれない。
ファミリアと言えばマツダです。
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