映画評「ワイルド・スピード/ファイヤーブースト」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2023年アメリカ=日本=中国合作映画 監督ルイ・レテリエ
ネタバレあり
シリーズ第10作は人物を色々と再登場させると同時に、映画の性格を少し変えた。数作続いたスパイ・アクションからもっと個人的なものへと新規まき直した形で、実質的に次の第11作と合わせて一つの話を構成するという「ハリー・ポッター」シリーズ以降流行るスタイルを取っている。
第5作「MEGA MAX」で死んだ麻薬王の息子ダンテ(ジェイスン・モモア)が父親を殺した人々に対し復讐を決意し、まず不死身の女ハッカー、サイファー(シャーリーズ・セロン)を襲撃。彼女は事件には関係ないが、主人公ドミニク(ヴィン・ディーゼル)とは縁があるわけで、妻レティ(ミシェル・ロドリゲス)と息子リトルB(レオ・アベロ・ベリー)と幸福に暮らす彼の前に、重体をおして警告しに訪れる。
偽情報でローマにおびき出されたドミニクの“ファミリー”は、ダンテが仕掛けたローマ爆破作戦に巻き込まれ、ドミニクは “ファミリー” を犯人と信ずる、仲間であるはずの秘密工作組織によって逮捕される。トップが若いエイムス(アラン・リッチスン)に変わったからだが、この人物は裏も表もある人物であることが解って来る。
ドミニクもしぶといがダンテもしぶとく、叔父(ジョン・シナ)と逃げるリトルBを車から拉致し、ドミニクと激しく争う。
いきなり今は亡きポール・ウォーカーが出てきてビックリ! 金庫を引き回すカー・アクションが凄かったのを思い出すが、ローマの町中を巨大爆弾が転がる前半の見せ場はこれを応用した印象。
終始カー・アクションには事欠かず、中盤のダンテの魔性を見せるストリート・レースの後、後半高速道路をドミニクの車やリトルBの乗る叔父の車と、ヘリコプターを繰り出すダンテ一派の車群とが激しく争うカー・アクションが物理的に凄いことになる。
このシリーズの良いところは、惜しみなく見せ場を繰り出すところであり、そうした画面を実現するCGそのもの以上にVFXの合成技術の素晴らしさである。CG(多分多くは実物のレタッチ)がいくら良くても合成が下手だと興醒めるのは人間の情と言うべし。
しかるに、盛大になればなるほど本当らしさが遠のき、クライマックスでは“ちょっとやりすぎだわい”と却って白けて来た。
ここ暫く続く “ファミリー” の人情が暑苦しく感じられるのも難点である。
という次第で、このところシリーズの評価が(日本を別にすると)低いのはやむを得ない感があるが、前作よりお笑いが減ったのは歓迎する。
監督はジャスティン・リンに代わって、「トランスポーター」シリーズでカー・アクションの実績のあるフランスのルイ・レテリエ。
新年早々事件が続いた。悪いことはこれで出尽くしたとなれば良いのだが。
2023年アメリカ=日本=中国合作映画 監督ルイ・レテリエ
ネタバレあり
シリーズ第10作は人物を色々と再登場させると同時に、映画の性格を少し変えた。数作続いたスパイ・アクションからもっと個人的なものへと新規まき直した形で、実質的に次の第11作と合わせて一つの話を構成するという「ハリー・ポッター」シリーズ以降流行るスタイルを取っている。
第5作「MEGA MAX」で死んだ麻薬王の息子ダンテ(ジェイスン・モモア)が父親を殺した人々に対し復讐を決意し、まず不死身の女ハッカー、サイファー(シャーリーズ・セロン)を襲撃。彼女は事件には関係ないが、主人公ドミニク(ヴィン・ディーゼル)とは縁があるわけで、妻レティ(ミシェル・ロドリゲス)と息子リトルB(レオ・アベロ・ベリー)と幸福に暮らす彼の前に、重体をおして警告しに訪れる。
偽情報でローマにおびき出されたドミニクの“ファミリー”は、ダンテが仕掛けたローマ爆破作戦に巻き込まれ、ドミニクは “ファミリー” を犯人と信ずる、仲間であるはずの秘密工作組織によって逮捕される。トップが若いエイムス(アラン・リッチスン)に変わったからだが、この人物は裏も表もある人物であることが解って来る。
ドミニクもしぶといがダンテもしぶとく、叔父(ジョン・シナ)と逃げるリトルBを車から拉致し、ドミニクと激しく争う。
いきなり今は亡きポール・ウォーカーが出てきてビックリ! 金庫を引き回すカー・アクションが凄かったのを思い出すが、ローマの町中を巨大爆弾が転がる前半の見せ場はこれを応用した印象。
終始カー・アクションには事欠かず、中盤のダンテの魔性を見せるストリート・レースの後、後半高速道路をドミニクの車やリトルBの乗る叔父の車と、ヘリコプターを繰り出すダンテ一派の車群とが激しく争うカー・アクションが物理的に凄いことになる。
このシリーズの良いところは、惜しみなく見せ場を繰り出すところであり、そうした画面を実現するCGそのもの以上にVFXの合成技術の素晴らしさである。CG(多分多くは実物のレタッチ)がいくら良くても合成が下手だと興醒めるのは人間の情と言うべし。
しかるに、盛大になればなるほど本当らしさが遠のき、クライマックスでは“ちょっとやりすぎだわい”と却って白けて来た。
ここ暫く続く “ファミリー” の人情が暑苦しく感じられるのも難点である。
という次第で、このところシリーズの評価が(日本を別にすると)低いのはやむを得ない感があるが、前作よりお笑いが減ったのは歓迎する。
監督はジャスティン・リンに代わって、「トランスポーター」シリーズでカー・アクションの実績のあるフランスのルイ・レテリエ。
新年早々事件が続いた。悪いことはこれで出尽くしたとなれば良いのだが。
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