映画評「おじいちゃん、死んじゃったって。」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2017年日本映画 監督・森ガキ侑大
ネタバレあり

奇しくも二日続けて葬儀関連である。しかも、これもまた喜劇色が相当強い。人の死だからと言って余りおごそかに作っても観客が参ってしまうからこういうのも悪くないだろう。

青春を謳歌する独身女性岸井ゆきのが、恋人とのセックスの最中に父(光石研)方の祖父の訃報が届く。もめた末に家での葬儀と相成る。
 喪主は父の兄・岩松了で、髪の薄さを気にしてばかりいる。離婚した美保純の妻の間にできた娘・小野花梨は高校3年生なのに煙草を吸い、引きこもりの兄・岡山天音と共に葬儀に参列する。
 しかし、父と伯父二人は仲が悪く、口論ばかりで、父親の死を悲しむそぶりもない。その意味では、娘たちのほうが一見白けているようで、死者に対し情を傾けているような気さえする。
 やがて齢が離れて見える二人の妹・水野美紀が現れる。フェラーリに乗ってやって来るなど金持ちらしい一方で独身者である彼女は素直に涙を流す。

最近の邦画では、概して女性の方が人間的に立派に描かれるようなことが多いような気がする。日本流のフェミニズムであろうか?

主題は一種の道徳論で、ゆきのちゃんが訃報を受けた時にセックスをしていたことに覚えた罪悪感についてである。
 彼女は、叔母の水野美紀と結婚や孤独に関して話した結果死生観について自得するところがあったようで、恋人を呼んでカー・セックスに及ぶ。
 性=生であり、それは死と同様に厳粛なものであると考えられるので、何の恥ずるところもないなずだ。恐らくゆきのちゃんも同じような死生観を得たのではないか。

映画としてはさほどのものと思わないものの、田舎の葬儀についてはなかなか正確と感じ、そこにじーんとさせられる。2011~12年に相次いで体験した両親の葬儀を思い出した。
 家族構成が我が家と酷似している。当方では母親が先に亡くなり、脳神経が詰まって独りで動くことが出来なくなった父親が “これが最後か!” と母親の死に顔を見てぽつりと吐いたことが忘れられない。涙こそ流さなかったが、58年一緒で毎週僕と一緒に見舞いに来て自分より長く生きると信じていた妻の予想外の急死には見た目以上にこたえたにちがいない。
 僕ら三人兄弟(男・女・男)は仲が良いので、この映画のようなことはなかった。大いに泣きもした。その代わり子供たち三人が冷静なのにちょっとショックを受けた。内孫の娘に “(数年前に亡くなった)猫の時は泣いたのに、 なんでおばあちゃんには泣かないのだ?” と訊いたら、 “あの時はガキだった” という返答が帰って来た。全く! 

監督はCM出身という悪ガキならぬ森ガキ侑大で、映画デビュー作とのこと。

僕も後何年生きられるか解らない。人に迷惑を掛けない範囲で、やりたいことをやって行こう。

この記事へのコメント