映画評「ブラックライト」

☆☆(4点/10点満点中)
2021年オーストラリア=アメリカ=中国合作 監督マーク・ウィリアムズ
ネタバレあり

リーアム・ニースンは一般ドラマで観たい俳優だが、「96時間」以降ある特定の人(大体家族、血族)の為に頑張るおじさんという役柄ばかりになって、少々お気の毒。
 1ヶ月前に「MEMORY メモリー」というのを観たばかりで、あの映画には血族は重要な要素として絡んでいなかったが、年齢を意識せざるを得ない設定に共通点があり、以前は守る対象が娘世代であったのに最近は孫世代になっている。本作では孫娘が絡む。

今はFBI長官に出世しているベトナム戦争時代の戦友エイダン・クィンとの縁で、初老ニースンはFBIの特殊工作員のような役目を負っている。
 元同僚の青年テイラー・ジョン・スミスが、陰謀で交通事故に見せかけて殺された女性市民活動家について、この事件に関心を持っている女性記者エミー・レイヴァ―=ランプマンと連絡を取り合う。ニースンは二人に絡んだ結果、クィンが必要とあれば治安維持の名目で善良なる一般市民を殺害するオペレーションを行っていると知るうちに、愛する娘クレア・ヴァン・ダー・ブームと孫娘ガブリエラ・センゴスが失踪する憂き目に遭う。
 二人を心配しながら、やがては自分の命も狙い始めたFBIの陰謀を明らかにしなければならないジレンマに悪戦苦闘する。

全く型通りで文句を言う元気も出て来ない。
 しかも、FBIとの対決は即ち娘たちの救出に繋がるので実はジレンマではないし、クィン氏が人も良いことに二人を証人保護プログラムに入れたので彼女たちは寧ろ命の安全が高められている。この辺は脚本陣の狙いが不明で、最後も大きな強烈なサスペンスのないまま大団円に至るのだから、腰砕けも良いところ。

ニースンは年齢の為にかつてのようには動けないのでアクションは最小限・・・と配慮された印象で、カー・アクションが結構あるのに、彼の乗る車だけは最後まで無傷のまま。こういうのは珍しい。

「96時間」でリュック・ベッソンについて”(映画の多様性の観点において)フランス映画をつまらなくした”と一種の批判をしたら、後年Allcinemaの当時の常連さんが別のベッソン絡みの作品でそのコメントを半ば批判しているのを読んだ。野外の批評家としてこれほど名誉なことはないと思いましたな。

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