映画評「夜のピクニック」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2006年日本映画 監督・長澤雅彦
ネタバレあり

去年の秋に恩田陸の同名小説を読み、十何年前にWOWOWで放映した映画版を無視したのを悔やんだ。映画化向きではないと感じたので敢えて観たいと思ったのだ。今年になってひょいと思い付いて調べたところ、幸運にもプライムビデオの会員無償枠のところにあったので、早速飛びついた。

ほぼ同時に細君と愛人(南果歩)を孕ませた精力横溢の会社員が、十数年後彼らが高校生になった頃に亡くなる。やがて、正妻の息子西脇融(石田卓也)と愛人の娘幸田貴子(多部未華子)が同じ高校の同じクラスになるが、互いの複雑な思いの為についぞ口を利かない。
 二人の高校には一昼夜をかけて80kmを歩く歩行祭なるものがあり、3年生になったヒロイン貴子はこの最後の祭の間に彼と話が出来るか否か自らに賭けている。二人の互いに対する不愛想を、周囲は恋心と勘違いする。

これが話の本流である。
 この本流に昨年アメリカに転校した、彼女と親友美和子(西原亜希)のもう一人の親友杏奈(加藤ローサ)からの謎めいた手紙、そして幽霊のように出没する謎の少年(池松壮亮)がミステリー的に沿って流れる。

原作はこの少年の扱いが非常に上手く、とても面白かったが、映画はそこまで効果的ではないし、意外と呆気なく彼が杏奈の弟と判ってつまらない。勘の良い方ならその瞬間に杏奈の手紙の謎も解けてしまうはず。
 原作でもそれは同じだが、文章で読むのと映像で見る違いに加え、タイミングが良くなく効果を失っている。
 夜になると俄然元気になるヘビメタ少年(柄本佑)のコメディーリリーフぶりも原作ほどその性格が明確ではなく空振り気味。

原作の妊娠騒動に至っては無視できる程度に縮小されているが、本流とは関係ない、こうした余り意味のないエピソード群は、実際の若者の無駄だらけの日々に重なる。この手の青春映画は、かかる無駄や横道に逸れるスケッチ的な描写に溢れるくらいの方が寧ろ良い。

結局杏奈の弟が異母兄妹の心理の齟齬を解決する。弟はデリカシーがないわけだが、杏奈はそれを利用して派遣ともなく弟を派遣したのである。彼女の頭と勘の良さに僕は感動した。その割に貴子の母親から事前に事情を聞かされた時はすぐに異母兄妹の意味を理解できず、間抜けに見えたが(笑)。

本作のことではないが、自分の理解不足を棚に上げて、説明不足と言う人が割合多い。多分に説明過剰なTVシリーズに甘やかされると、そういうことになりがち。逆にミニマルな映画に見なれている人は、TVドラマは説明過剰で胃にもたれることが多い。

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