映画評「対峙」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2021年アメリカ映画 監督フラン・クランツ
ネタバレあり

アメリカでは相変わらず銃規制が進まず、一年間に何度も学校などの施設で複数が死傷する銃撃事件が起きる。全米ライフル協会が圧力団体として機能している為その支持政党である共和党が全く動こうとしないからである。どこの国でも似たようなもので、議員族は選挙で勝つことが第一目標になってしまっている。

学校での銃撃をテーマにした作品を幾つか観ているが、本作は事件から6年後、最初に銃撃された被害者少年の両親ジェースン・アイザックスとマーサ・プリンプトン、事件の最後に死んだ加害者の両親リード・バーニーとアン・ダウドが、今後の人生を落ち着くものにしたい為にミーティングを行うことにする、というお話。

舞台が聖公所(聖公会教会)というのが肝である。

二組は当初互いに相手を気遣う態度を取るが、いつの間にか始まった加害者についての話から感情が高まっていき、相手を糾弾するまでは行かないにしても落ち着きを失っていく。
 ここで注目すべきは、語り手の感情が落ち着きを失うと、固定であったカメラが(僅かではあるが)揺れるカメラに転じるというリンク性だ。

話が低回的になって埒が明かなくなった頃、アンが被害者夫婦に息子のことを話してくれないかと頼んだことから大きく彼らの心が動く。とりわけマーサは息子のことを話すうちに、息子を思えばこそ、夫婦と加害者を赦すべきだという心境になる。
 この手の事件では被害者家族は勿論、加害者の家族も常識人であれば辛いのは言うまでもないので、こういう終了の仕方は良いと思う。

少々気に入らないのは、その赦しの背景としてキリスト教を積極的に持ってきたことである。聖公会教会がミーティング場所に選ばれたのが肝と述べたのはその為で、宗教の為せる業とでも言いたげなエンディングはちょっと鼻白む。
 二組の夫婦の対話ぶりとその結果が大変良く、俳優陣の演技合戦も見応えがあるだけに、僕は残念に思う。

マーサ・プリンストン(キース・キャラダインの娘)・・・「モスキート・コースト」「旅立ちの時」の少女スターも貫禄が付きました。

「旅立ちの時」と言えばリヴァー・フェニックス。名前に反して短命だったが、生きていたらどんな俳優になったろうか。僕の部下の女の子が訃報に触れて言葉を失っていたっけ。

この記事へのコメント