映画評「離ればなれになっても」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2020年イタリア映画 監督ガブリエレ・ムッチーノ
ネタバレあり

ガブリエレ・ムッチーノは、アメリカで作った「幸せのちから」「7つの贈り物」でなかなかの力を見せたが、近年はイタリアに戻っているようである。

1982年。高校生リッカルドが過激デモに巻き込まれて銃撃されたところをパオロとジュリオに助けて貰い、3人は親友となる。これにパオロの恋人ジェンマを交えて、廃車同然の自動車を復活させて乗り回るなど青春を謳歌するが、母に病死されたジェンマがナポリへ引っ越すなどしてそれも終わる。
 幾ばくかの年月が経ち、代用教員になったパオロ(キム・ロッシ・スチュアルト)はジェンマ(ミカエラ・ラマツォッティ)と再会して同棲生活に入るが、映画ジャーナリストになったリッカルド(クラウディオ・サンタマリア)が結婚した頃、弁護士となったジュリオ(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)にジェンマを奪われる。
 しかるに、ジュリオは自分が弁護を担当した大物議員の娘マルゲリータ(ニコレッタ・ロマノフ)に心を移す。
 以降、パオロは正教師の地位を得るも孤独感に苛まれる為、教師の仕事に没入するしかなく、リッカルドは収入が安定しない為に結婚を破綻させてしまう。その点ジュリオは恵まれているが、それでも妻の愛情を留めていくことができず、可愛らしい娘の心も両親から離れていく。

といった具合に、4人の男女のおよそ40年に渡る離合集散を愛憎関係中心に描く人生行路群像劇である。

儒教的な性愛観が復活気味の日本人には、事情のある浮気騒動にさえ抵抗感を示すのを考えると、欲望に任せて相手を変えていくイタリア人の恋愛観について行けない方が多いのではないか。それでも登場人物の勢いに不快感を起きにくいのか、どの映画サイトでも好評である。逆に、普段、事情のある浮気には大いに理解を示す僕がこの映画のジェンマに余り感心しないのだから、面白いでしょう?(笑) 

それでも昔のイタリア艶笑喜劇などと違って場面そのものが丁寧に作られているのには好感が持てる。

登場人物が画面に向かって話しかける、演劇で言う【第四の壁】を破る手法が時代を超えて或いは複数の人物により採られているのは少々新鮮(こうした見せ方自体はアレンの映画などで使われ、それほど珍しくない)だが、後半なくなって不徹底に終わる。

僕は、ジェンマと言えばジュリアーノ・ジェンマという世代です。その昔「シンデレラ」(1976年)という映画でヒロインを演じた女優がジェマ・クレーヴンといいましたね。綴りは本作のヒロインと同じ。

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