映画評「アシスタント」(2019年)

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2019年アメリカ映画 監督キティ・グリーン
ネタバレあり

MeToo運動に発展したミラマックスの製作者ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラを元ネタにしたフィクション。日本版ウィキペディアのストーリー解釈は正鵠を射ていないと思われる。

早朝、大映画会社製作者(会長)のアシスタントである妙齢美人ジュリア・ガーナーが出社する。ボスが大プロデューサーであるから、何人かいるアシスタントの一人にすぎない新人の彼女も運転手付きの出勤である。凄いですな。
 一流大学を出たのに仕事は雑用みたいなものが多くて鬱屈を禁じ得ないが、それが故に、彼女よりさらに若い田舎出の妙齢美人(僕の区分ではまだ少女)が雇われ、かつ、その住処が会社が提供したホテルの一室であると知り、周囲の情報を合わせて会長が彼女と密会していることを掴む。雑用の間に知り得た情報もある。
 それを幹部(人事のトップか?)に知らせても嫉妬と矮小化される(勿論、彼は相手が会長のセクハラやパワハラを訴えに来たことを承知でとぼけているのである)。この事件が早くも会長に伝わった後彼女は、先輩アシスタント二人に指示された内容で謝罪のメールを送る。会長は御機嫌である。
 かくして夜遅く退社した彼女は多忙で忘れていた誕生日を迎えた父親に電話を掛ける。父親は良い就職が出来たと喜んでいるが、彼女は虚しさを覚える。

ヒロインが幹部に会いに行くのは、ウィキペディアに記されているのと違って、自分が不当に扱われているからではない。自分より若い女性がセクハラに遭っていることを無視できなかったのである。自分が不当に扱われているのは会長の不正義の一つにすぎないと彼女は理解している。逆に言えば、優れた女性をかくも不当に扱う会社では、もっと深刻なセクハラやパワハラも起こる筈である。

エレベーターに乗っているショットが多い。社内外の様々の人々と乗り合わせている。会話が少なく会社の冷ややかな空気が感じられる。

カメラは固定。ヒロインへの距離が見事に的確である。幹部との面会を空しく終えた後、彼女の煙草を持つ手がアップで、次に壁を後ろに煙草を持った彼女全体がロング(引き)で捉えられる。その後事務所に入って会長からかかった電話に出る直前の彼女をバストショットで、電話の声を聞く彼女をアップで捉える。この辺りの流れが非常に良い。
 状況に応じてあるいは状況の変化に即して人物への距離を見事に使い分けている。簡単に言えば、カット割りがよく考えられているということだ。ライティング、というより劇中の光(ライト)の扱いも繊細。キティ・グリーンという女性監督はドキュメンタリー出身で、本作が劇映画第一作というのが信じられない。

悩みを抱えるヒロインの心情を描出する映画であるから、お話自体はそう面白いというわけには行かないが、映画言語で映画を観る人にお薦め。

トランプが昔のセクハラ事件から始まった名誉棄損の罪で賠償を命じられた。常套手段で民主党の陰謀のように言っているが、事実としても見苦しい。政策で彼を支持している無党派層は、こういう言動を嫌うだろう。共和党支持者のトランプ応援団は却ってそれに勢いづく。僕にはちょっと理解しがたいものがある。民主党から有望な若手が出てきてほしいね。アメリカにとってどっちが良いか解らないが、世界にとってはトランプ以外の人が勝たないと困る。

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