映画評「007/ダイ・アナザー・デイ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2002年イギリス=アメリカ合作映画 監督リー・タマホリ
ネタバレあり

ピアース・ブロスナンの4度目にして最後のジェームズ・ボンドで、シリーズ通算第20作。わがブログもこれにて全ての007を扱うことになる(但し、他プロダクションの「ネバー・セイ・ネバー・アゲイン」は含まず)。

1991年にソ連がなくなったので、シリーズの関心はアジアに移り、第18作で中国を絡め、今回は北朝鮮である。中国の場合は寧ろ味方であった。
 今回、北朝鮮への風刺的スタンスがあるにしても国家としての北朝鮮を敵扱いにはせず、将軍の息子を野心溢れる陰謀家にしているので、従来の007と、社会主義独裁国家あるいは東側を敵とするオーソドックスなスパイものとの中間的な位置という感じである。
 本シリーズは本格的なスパイ映画としては案外珍しいスタンスを取って来たわけで、多分そのスタンスが映画としては後発の「ミッション:インポッシブル」シリーズに引き継がれたのではないか。

北朝鮮。将軍の息子ムーン大佐(ウィル・ユン・リー)がピアース・ボンドに殺される。朝鮮に捕縛されたボンドは捕虜交換で14か月後に釈放され、裏切りを否定しきれないMI6に正式復帰も認められないままキューバに飛び、先端的な整形手術技術をする病院を舞台に大暴れ。
 さらに、南ア産のダイヤモンドをアイスランド産と偽装して扱っているらしい企業のトップのグスタフ(トニー・スティーヴンズ)に接近するうちに、成層圏に配した強力な光線により世界征服したがっている彼の野望が明らかになって来る。
 ここに先に潜入していた女スパイにロザムンド・パイク、NSAの捜査官にハリー・ベリーが扮して搭乗、大いに絡む。

前3作に比べると乗り物を利用したアクションが少なく、その分白兵戦が目立つが、体を張ったアクションでは少々見劣りするブロスナンとしては頑張っている部類だろうか。

ダイヤモンドは永遠に」のもじりである。英国旗のパラシュートだったり、パラグライダーのアクションであったり、随所に他の旧作をもじった趣向もある。
 これを素直に喜ぶのも良いが、個人的には新味不足という印象が勝ち、弱い。

既に大人気スターだったハリー・ベリーと、現在は大物になった当時の新人女優ロザムンド・パイクを主たるボンド・ガールとした配役は現在の視点では豪華。

そのうち「ネバー・セイ・ネバー・アゲイン」でも観てみますか。

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