映画評「噓八百 なにわ夢の陣」

☆☆★(5点/10点満点中)
2023年日本映画 監督・武正晴
ネタバレあり

「噓八百」シリーズ第3弾。作られるごとに尻すぼみ的な印象となっているが、TVの「開運‼なんでも鑑定団」が今年で30年を迎えるように、案外3年に1度のペースで今後も作られるかもしれない。

目利き古美術商・中井貴一が、大阪秀吉博委員会から顧問を依頼される。秀吉七品のうち “鳳凰” と名付けられた椀だけがこれまで見つかっていず、委員会はこれを何らかの形で目玉としようとしているのである。
 片や、相変わらず目の出ない陶芸家・佐々木蔵之介は、霊感商法まがいながら高価で取引される現代絵画の売れっ子・安田章大を抱えてTAIKOH秀吉博を開催しようとしている美人中村ゆりに声を掛けられて、 “鳳凰” と見なされる作品を作って貰おうとしている。

二代秀吉イベントのバッティングに、贋物商売でお馴染みのこの二人が関わるところを可笑し味にしたのだろうが、可笑し味になっていない。中井貴一が委員会に招聘された理由もよく解らないし、中村ゆりの目的もよく解らない。詐欺をやるということではなく、終盤の方で画家のイマジネーション惹起にこの椀が関わっていることが解るが、それではコン・ゲームとしての面白味が醸成されるはずがない。

このコンビが二人とも雇い先にお払い箱になると、中井は、佐々木が何とか作り上げた椀を繰り出して、 “鳳凰” が発見されたとして第3の秀吉展を強引に開催する。
 これに驚いた委員会が中井をそれと誤解していた有名鑑定士・笹野高史を率いて、続いて中村ゆりと安田の姉弟(と後で判る)が駆けつける。中井は朗々と弁舌をぶってそれなりに商売としてしまう。詐欺が行われるのはここに至って初めてであるが、最後に、椀の代りに手に入れた安田の絵画をたった100万で売ってしまうという馬鹿をやらかした佐々木と友近の夫婦に中井ががっかりする、という例によってのズッコケがある。

しかし、詐欺自体が豪快でも痛快でもないのでこのズッコケが空回り。

また、姉弟の許に裁判所から文書が届いたり、TVでの秀吉絡みの報道に中井が驚く辺りもピンと来にくい。彼の発言が借用されたということか? 

ほぼ同じ頃に佐々木と安田が共に “鳳凰” のインスピレーションを得るというシークエンスでマルチ画面を使ったり、カットバックを使ったりするのが映画としてのハイライトだが、コン・ゲームと言える作品としてはシリアスすぎる。

といった具合にどうも、狙ったであろう可笑し味面白味が的を射ていない感が強く、釈然としないまま終わる。

群馬でも南西部のこの辺は雪は大して降らないのだが、昨日から今日にかけて結構降りました。我が家の屋根を壊した悪夢の2014年に比べたら大したことはないですが、従来なら今回程度でも大騒ぎだったでしょうな。上州雪の陣。

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