映画評「遺灰は語る」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2022年イタリア映画 監督パオロ・タヴィアーニ
ネタバレあり
兄ヴィットリオを失った後パオロ・タヴィアーニが単独で作った作品。タヴィアーニ兄弟が「カオス・シチリア物語」で取り上げたことのある劇作家ルイジ・ピランデルロの遺灰を狂言回しにして展開する。この映画の面白味と美しさが解れば、大人のハリケーン(by 平野美宇)ならぬ大人の映画ファンだ。
TV(今回はそれどころかパソコン。後でチャンスがあればハイビジョン録画しよう)の小画面ではお話ばかり追いがちになるので、採点は遠慮した。
ピランデルロは「作者を探す六人の登場人物」というメタフィクション戯曲の傑作を書いていて、僕はこれを読んだことがあるのみだが、実に面白かった。メタフィクション映画の秀作「主人公は僕だった」(2006年)を観た時、勿論かの傑作を思い出した。
さて、本作。最初はパートカラー。
1934年にノーベル文学賞を受賞した2年後にピランデルロは死去するが、その遺灰をムッソリーニのファシスト政権はローマに留め置く。
イタリアの敗戦後、彼の生誕地シチリアは特使を送ってローマから遺灰の入った壺を持ち帰ろうとするが、(火葬を禁じる)カトリック教会関係者とちょっともめたり、飛行機での輸送が死人(厳密には遺灰にすぎないが)と乗るのを嫌う乗客やパイロットの忌避にあったり、打って変わって列車では庶民たちが壺の入った木箱を拝借してトランプに興じたりする。消失したのにパニクった特使は怒るより一安心。
かくしてシチリアに着いて岩に埋め込まれる。
ここでカラーに代わり、突然カラーの短編映画が始まる。晩年アメリカで書いた短編小説「釘」を映画化したもので、アメリカを舞台にシチリア出身の少年が喧嘩をしていた片方の少女を殺す。少年は心に誓ったように一生をかけてその墓参を続ける。
ピランデルロ本人と、その彼が書いた小説による少女によって、死と墓で共鳴させる趣向である。
本編と言うべきピランデルロの遺灰を巡るエピソードは、僕が最後のネオ・レアリスモ作家と僕が考えるタヴィアーニらしい厳しくもユーモラスな描写が続く。
二番目の短編映画は、アメリカを舞台にしながら、ムードには僕が鑑賞年のベスト1に選んだ「カオス・シチリア物語」に似た厳しさと野趣があり、さすがにピランデルロとタヴィアーニのタッグは強烈であると感嘆させられた。
ただ、一般的な意味では面白いタイプの作品ではないので、マニアに近い映画ファン以外に積極的にはお勧めできない。
世界卓球で日本女子は強力になったことを世界に見せつけた。中国の選手が勝って涙を流したことがそれを物語る。今年のパリ五輪に向けて中国は、二敗したとは言え恐るべき潜在力を示した張本美和への対策をしてくるだろう。男子も準決勝で韓国が中国を追い込むというゲームもあった。遂に中国もうかうかできない時代になりましたね。
2022年イタリア映画 監督パオロ・タヴィアーニ
ネタバレあり
兄ヴィットリオを失った後パオロ・タヴィアーニが単独で作った作品。タヴィアーニ兄弟が「カオス・シチリア物語」で取り上げたことのある劇作家ルイジ・ピランデルロの遺灰を狂言回しにして展開する。この映画の面白味と美しさが解れば、大人のハリケーン(by 平野美宇)ならぬ大人の映画ファンだ。
TV(今回はそれどころかパソコン。後でチャンスがあればハイビジョン録画しよう)の小画面ではお話ばかり追いがちになるので、採点は遠慮した。
ピランデルロは「作者を探す六人の登場人物」というメタフィクション戯曲の傑作を書いていて、僕はこれを読んだことがあるのみだが、実に面白かった。メタフィクション映画の秀作「主人公は僕だった」(2006年)を観た時、勿論かの傑作を思い出した。
さて、本作。最初はパートカラー。
1934年にノーベル文学賞を受賞した2年後にピランデルロは死去するが、その遺灰をムッソリーニのファシスト政権はローマに留め置く。
イタリアの敗戦後、彼の生誕地シチリアは特使を送ってローマから遺灰の入った壺を持ち帰ろうとするが、(火葬を禁じる)カトリック教会関係者とちょっともめたり、飛行機での輸送が死人(厳密には遺灰にすぎないが)と乗るのを嫌う乗客やパイロットの忌避にあったり、打って変わって列車では庶民たちが壺の入った木箱を拝借してトランプに興じたりする。消失したのにパニクった特使は怒るより一安心。
かくしてシチリアに着いて岩に埋め込まれる。
ここでカラーに代わり、突然カラーの短編映画が始まる。晩年アメリカで書いた短編小説「釘」を映画化したもので、アメリカを舞台にシチリア出身の少年が喧嘩をしていた片方の少女を殺す。少年は心に誓ったように一生をかけてその墓参を続ける。
ピランデルロ本人と、その彼が書いた小説による少女によって、死と墓で共鳴させる趣向である。
本編と言うべきピランデルロの遺灰を巡るエピソードは、僕が最後のネオ・レアリスモ作家と僕が考えるタヴィアーニらしい厳しくもユーモラスな描写が続く。
二番目の短編映画は、アメリカを舞台にしながら、ムードには僕が鑑賞年のベスト1に選んだ「カオス・シチリア物語」に似た厳しさと野趣があり、さすがにピランデルロとタヴィアーニのタッグは強烈であると感嘆させられた。
ただ、一般的な意味では面白いタイプの作品ではないので、マニアに近い映画ファン以外に積極的にはお勧めできない。
世界卓球で日本女子は強力になったことを世界に見せつけた。中国の選手が勝って涙を流したことがそれを物語る。今年のパリ五輪に向けて中国は、二敗したとは言え恐るべき潜在力を示した張本美和への対策をしてくるだろう。男子も準決勝で韓国が中国を追い込むというゲームもあった。遂に中国もうかうかできない時代になりましたね。
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