映画評「ちひろさん」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2022年日本映画 監督・今泉力哉
ネタバレあり
安田弘之なる漫画家の同名コミックを、日本のエリック・ロメールこと今泉力哉が映像に映した群像劇である。
元風俗嬢のちひろさんこと本名・古澤綾(有村架純)は、現在お弁当屋さんで店員として働いているが、他人に必要以上に関心を持たず、他人からの関心にも余り興味を持たない生き方をしていて、その結果、干渉過多のくせに自分のことを碌に知らない両親にうんざりしている高校二年生・瀬尾久仁子(豊嶋花)や逆に夜の仕事に忙しいシングルマザーの母親にネグレクトされている小学生佐竹まこと(嶋田鉄太)と懇意になる。
彼女は店長(平田満)の妻・多恵さん(風吹ジュン)が同じ星に生れた人と感じ、母親のように慕っている。折も折、本当の母親が亡くなるが、葬式には出ない。後で簡単に墓参したようではある。
かくして周囲の人間を和ませてきたちひろさんは、しかし、町を去り、ある農場で働き始めたらしい。
エピソードはたくさんあるが、これが大体のアウトラインで、まあヒロインは幸せの配達人といったところだろうか。
彼女は主役ではあるが、容易に想像できるように、狂言回し的でもあって、彼女の周囲で群像劇を成していた関係者が一堂に会する食事会からも去ってしまう。彼女が積極的に孤独を愛するのは、多恵さんの言葉も裏打ちするわけで、周囲が幸福になると、孤独を愛する虫が騒ぎ出すのであろう。
幸福の寓話でもあって、ヒューマン性が先に立ち、また原作もの故に、今泉監督らしいちょっととぼけた部分や、ロメールに似た、二人による台詞を際立たせる画面の切り取り方の面白味が多少薄めではあるが、それでも二人による会話が目立つのは彼らしい。人生劇は概して二人の場面が多いわけですけどね。
ヒロインの超然とした感じが僕は好きである。
有村架純は、一時期の小泉今日子のようなムードを出してきていはしないか。
2022年日本映画 監督・今泉力哉
ネタバレあり
安田弘之なる漫画家の同名コミックを、日本のエリック・ロメールこと今泉力哉が映像に映した群像劇である。
元風俗嬢のちひろさんこと本名・古澤綾(有村架純)は、現在お弁当屋さんで店員として働いているが、他人に必要以上に関心を持たず、他人からの関心にも余り興味を持たない生き方をしていて、その結果、干渉過多のくせに自分のことを碌に知らない両親にうんざりしている高校二年生・瀬尾久仁子(豊嶋花)や逆に夜の仕事に忙しいシングルマザーの母親にネグレクトされている小学生佐竹まこと(嶋田鉄太)と懇意になる。
彼女は店長(平田満)の妻・多恵さん(風吹ジュン)が同じ星に生れた人と感じ、母親のように慕っている。折も折、本当の母親が亡くなるが、葬式には出ない。後で簡単に墓参したようではある。
かくして周囲の人間を和ませてきたちひろさんは、しかし、町を去り、ある農場で働き始めたらしい。
エピソードはたくさんあるが、これが大体のアウトラインで、まあヒロインは幸せの配達人といったところだろうか。
彼女は主役ではあるが、容易に想像できるように、狂言回し的でもあって、彼女の周囲で群像劇を成していた関係者が一堂に会する食事会からも去ってしまう。彼女が積極的に孤独を愛するのは、多恵さんの言葉も裏打ちするわけで、周囲が幸福になると、孤独を愛する虫が騒ぎ出すのであろう。
幸福の寓話でもあって、ヒューマン性が先に立ち、また原作もの故に、今泉監督らしいちょっととぼけた部分や、ロメールに似た、二人による台詞を際立たせる画面の切り取り方の面白味が多少薄めではあるが、それでも二人による会話が目立つのは彼らしい。人生劇は概して二人の場面が多いわけですけどね。
ヒロインの超然とした感じが僕は好きである。
有村架純は、一時期の小泉今日子のようなムードを出してきていはしないか。
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