映画評「果てなき航路」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1940年アメリカ映画 監督ジョン・フォード
ネタバレあり

ジョン・フォード監督の未鑑賞作品発見と勇んで観たが、IMDbに行ったら投票済みでした。フォードの未鑑賞作品はごく初期の作品しかないらしい。何と原作はユージン・オニールの戯曲4編。

ドイツが戦争を初めてそれほど経っていない頃の大西洋。TNT(火薬)を積んでいる為軍事機密保持の都合上、女性たちが待っている西インド諸島への上陸もままならぬ仕事についてしまった商船の船員たちのお話である。
 ウォード・ボンドは嵐で負った怪我で死亡する。単独の行動が多いイアン・ハンターは、イライラする船員たちによってスパイの疑いをかけられる。ベッドの下に謎めいた箱がある。しかし、そこから見出されたのは愛妻からの悲痛な手紙のみ。反省する船員たち。が、航行終了間際にハンターはドイツ軍戦闘機により被弾し死亡する。
 かくしてロンドンに到着した一行のうちスウェーデン生まれのジョン・ウェインは帰国の途に付こうとする。その彼に催眠剤を飲まして拉致、船員に仕立てようとする悪漢一味の船に、トーマス・ミッチェルら仲間が襲撃をかけて奪還するが、リーダーのミッチェルは昏倒させられ帰還できないまま、船は出航する。その船はやがてドイツ軍に撃沈させられる。

という群像劇で、誰が主役とも言い切れない作品だが、最後の扱いを考えると、ミッチェルが一番それらしい。クレジットの筆頭であるウェインはお話の動力としては大した働きをしていず、せいぜい帰郷を以って、どこか郷愁の基調を持つ本作のムード醸成に貢献するくらいである。

時局的な話題を含めて中盤まで退屈する時間帯が多いが、ロンドンのパブでのフォードらしい猥雑な人物の交錯ぶりやそれに続くウェイン奪還のアクションは、名人グレッグ・トーランドのカメラを含めて好調、大分盛り返す。

Allcinema はほめ過ぎと思う。

ユージン・オニールは日本語訳のあるものは大体読んだ。彼はウーナ・オニールの父親、つまりチャールズ・チャップリンの義父ででござる。とは言っても、チャップリンにとってウーナは娘くらいの年だから、オニールとは全くの同世代。

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