映画評「ワンダー・ガールズ 東方三侠」

☆★(3点/10点満点中)
1993年香港映画 監督ジョニー・トー
ネタバレあり

香港のワイヤー・アクション。時代も場所もよく分らないが、舞台はほぼ現在である。

生まれたばかりの赤ちゃんが次々と誘拐される事件が起きる。現場では、何者かが日本流に言えば ”隠れ蓑” を使ってやりたい放題。その正体は、次の皇帝を決めるのに躍起となっている地下帝国から使わされた美人ミシェル・ヨーである。
 事件解決の指揮を執る刑事ダミアン・ラウの妻アニタ・ムイは、実は仮面を被って夫にも内緒で警察をバックアップしている通称ワンダーウーマン。
 これに賞金稼ぎの美人マギー・チャンが絡む、という仕掛けで、ミシェルとアニタは実は同じ訓練所で鍛えられた義理姉妹という設定。

観終わった後に整理して書けばこんな感じになるが、甚だ要領が悪くて実に解りにくい。Allcinemaの投稿に散漫という意見があるが、それどころか、僕はいったい何を見せたいのかと暫く首を傾げ続けていた。カットの繋ぎも(とりわけ前半において)デタラメ千万で誰が誰に対して何をやろうとしているのかすらよく解らない。
 展開に関しては脚本を書いたサンディ・ショウなる人物の責任に帰して良いのだろうが、カットの繋ぎは監督ジョニー・トーのせいにちがいない(Allcinemaにあるチン・シウトンはアクション監督)。アメリカのメジャー映画では監督が編集に全くタッチしないケースが実は結構多いが、香港はそんなことはあるまい。

といった具合に、純粋に技術的なレベルは★一つで十分だが、後半のアクション場面は生き生きしているし、現代劇とアクション時代劇を合わせたようなハイブリッド感が馬鹿らしさの中に引き立ち悪くない。最後「ターミネーター」のパロディー(敵のしつこさを含めて)みたいになると、苦笑が洩れないでもないが。

とりわけ前半に目立つお笑い要素は不要。この時代の香港アクションの悪い癖で、泥臭さ醸成に大いに貢献する。

最後に、ミシェルは愛する隠れ蓑研究家の恋人を襲う身内と敵対、他の美人二人と組んで大格闘を演じ、ここにワンダーガールズ誕生と相成り、続編の製作を匂わして終わる。

この程度のお話に疑問を呈しても始まらないような気がするが、隠れ蓑研究中なのにミシェルは見事に隠れ蓑を活用している。その恋人は敵の来襲が解っているのに、完成した隠れ蓑を利用しようともしない。これを使えば相手の強敵アンソニー・ウォンも手を出せまいに。因みにしつこいのはウォン氏ではなく、その親玉です。

ワンダーとガールズの間に点が入るのか入らないか各サイトでバラバラだが、DVDジャケットには点が入っているので、入れることにする。

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