映画評「バウンティフルへの旅」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1985年アメリカ映画 監督ピーター・マスタースン
ネタバレあり
劇場公開より何年か後衛星放送の完全版で観た。NHKかWOWOWかは憶えていない。
終戦後1940年代後半のテキサスでの物語。
ヒューストンで、息子ジョン・ハードの妻カーリン・グリンのアパートで暮らす70がらみの老婦人ジェラルディン・ページが、意地の悪いところのあり自分の年金小切手を狙っているのではないかと信じている嫁のいじめに嫌気が差し、心臓が悪くて死の近そうなこともあり、20年前に捨てた故郷の村バウンティフルに郷愁に堪えがたくなる。鬼嫁の居ぬ間の洗濯とばかりに家から抜け出て切符を買おうとするが、鉄道もバスもそこには停まらないことを知らされる。
仕方がなく一番近い隣町までの切符を求めた結果、親切な娘さんレベッカ・デモーネイと同乗することになり、色々と話を交わす。彼女と別れたバス停留所では担当の男性も、息子夫婦の要求で現れた保安官リチャード・ブラッドフォードも親切で、保安官は朝早く息子夫婦が到着する前に老婦人を今は一人も残っていない村の彼女がかつて過ごした家にまで連れて行ってくれる。
その荒廃ぶりに彼女は慨嘆する一方、目的を果たした満足感も覚えて、後から現れた息子夫婦と仲良く過ごすという約束をする。
この間観た邦画の新作「658km、陽子の旅」ほど完全ではないが、ロード・ムービーである。ロード・ムービーというジャンルは観客に一定の感慨をもたらすことが多い。多分見知らぬ人との交流で生じる化学反応が心地良さを生むのではないかと思う。
本作でも、息子や嫁が容易に見せず、他人だからこそ与えてくれる優しさをヒロインに示すレベッカ(いつもと違ってぐっとストレートな役柄)や保安官たちとの交流にジーンとさせられるものがある。
老母の頑張りに細君に頭の上がらなかった息子が少し男気を見せるという最後も良い。嫁は現実主義的だが、そこまでひどくはない。理想的な人物像と比較しない方がよろし。
ホートン・フートの戯曲の映画化で、時々舞台臭さが出るところもあるが、老婦人の心境を描き上げて見事と言うべし。その老婦人にジェラルディン・ページが扮して抜群。ご贔屓映画「インテリア」(1978年)と甲乙つけがたい。
本作は本当に南部が舞台だが、北部・東部・西部が舞台でもこのような親子や夫婦の葛藤が繰り広げられる芝居やその映画版を僕は “南部もの” と呼んでいる。
1985年アメリカ映画 監督ピーター・マスタースン
ネタバレあり
劇場公開より何年か後衛星放送の完全版で観た。NHKかWOWOWかは憶えていない。
終戦後1940年代後半のテキサスでの物語。
ヒューストンで、息子ジョン・ハードの妻カーリン・グリンのアパートで暮らす70がらみの老婦人ジェラルディン・ページが、意地の悪いところのあり自分の年金小切手を狙っているのではないかと信じている嫁のいじめに嫌気が差し、心臓が悪くて死の近そうなこともあり、20年前に捨てた故郷の村バウンティフルに郷愁に堪えがたくなる。鬼嫁の居ぬ間の洗濯とばかりに家から抜け出て切符を買おうとするが、鉄道もバスもそこには停まらないことを知らされる。
仕方がなく一番近い隣町までの切符を求めた結果、親切な娘さんレベッカ・デモーネイと同乗することになり、色々と話を交わす。彼女と別れたバス停留所では担当の男性も、息子夫婦の要求で現れた保安官リチャード・ブラッドフォードも親切で、保安官は朝早く息子夫婦が到着する前に老婦人を今は一人も残っていない村の彼女がかつて過ごした家にまで連れて行ってくれる。
その荒廃ぶりに彼女は慨嘆する一方、目的を果たした満足感も覚えて、後から現れた息子夫婦と仲良く過ごすという約束をする。
この間観た邦画の新作「658km、陽子の旅」ほど完全ではないが、ロード・ムービーである。ロード・ムービーというジャンルは観客に一定の感慨をもたらすことが多い。多分見知らぬ人との交流で生じる化学反応が心地良さを生むのではないかと思う。
本作でも、息子や嫁が容易に見せず、他人だからこそ与えてくれる優しさをヒロインに示すレベッカ(いつもと違ってぐっとストレートな役柄)や保安官たちとの交流にジーンとさせられるものがある。
老母の頑張りに細君に頭の上がらなかった息子が少し男気を見せるという最後も良い。嫁は現実主義的だが、そこまでひどくはない。理想的な人物像と比較しない方がよろし。
ホートン・フートの戯曲の映画化で、時々舞台臭さが出るところもあるが、老婦人の心境を描き上げて見事と言うべし。その老婦人にジェラルディン・ページが扮して抜群。ご贔屓映画「インテリア」(1978年)と甲乙つけがたい。
本作は本当に南部が舞台だが、北部・東部・西部が舞台でもこのような親子や夫婦の葛藤が繰り広げられる芝居やその映画版を僕は “南部もの” と呼んでいる。
この記事へのコメント
いい映画でしたね。 レンタル落ちのVHSテープを持っていましたが再生装置が壊れてしまい、あまりメジャーな作品でもないし再見は無理かと思っていましたが、今回こちらで取り上げられていたのでひょっとして?と検索してみたらUNEXTで無料配信されていました! こういうのは嬉しいです。ありがとうございます。
“夢に見るたび故郷は あぁ 日ごと夜ごとに遠くなる〜“ (by Maki Asakawa)
私の場合 故郷との距離は40数キロですが、歳をとって分かったことは遠くなるのは距離ではなくてそこで過ごした時間なのでした。
秀作でしたね〜
書いた本人も内容忘却の彼方でしたが
拙過去ブログにありましたので
持参いたしました。
もしかしてと
探してみましたらアマプラにありましたので
これからゆっくり観させていただきます。(嬉)
ペイジ、いいですね〜
そうそう、「インテリア」!
切に切に再見したい!
>UNEXTで無料配信されていました! こういうのは嬉しいです。ありがとうございます。
僕はWOWOWの配信で観ました。
何故か突然出てきました。僕も嬉しかったですよ。
>私の場合 故郷との距離は40数キロですが、歳をとって分かったことは遠くなるのは距離ではなくてそこで過ごした時間なのでした。
そうでしょうねえ。
僕はUターンして、合計すると故郷にいる時間のほうが長くなりましたが。
>書いた本人も内容忘却の彼方でした
僕は読んだような記憶があったですよ。改めて確認はしませんでしたが。
やっぱりありましたか!^^
>探してみましたらアマプラにありました
こういう古い映画は、一つのところにあると、他のところにもある可能性がありますね。
>「インテリア」!
家族は、大量にブルーレイに映画を保存していることに批判的ですが、新しい映画がダメで、古い映画もなかなか出て来ない今日この頃を思うと、この十余年やってきたことはやはり正解だったですよ。
昨日早速再鑑賞致しました。 確かに室内の場面は舞台っぽく感じる所がありましたが、それが特に欠点にはなっていませんでした。
今UNEXTでジェラルディンペイジ出演作は「白い肌の異常な夜」と「インテリア」を見ることができます。
私はUNEXTの回し者ではありませんけど、UNEXTはなかなか良いですよ。
先日はフレディMムーラーの山の三部作が放映されているのに気づいて、またまた再見を諦めかけていた「山の焚火」を観ることが出来ました。
>確かに室内の場面は舞台っぽく感じる所がありましたが
典型的な”南部もの”のムード^^
悪くはなかったです。
>「白い肌の異常な夜」と「インテリア」
これはマイ・ライブラリーに在り!
>私はUNEXTの回し者ではありませんけど、UNEXTはなかなか良いですよ。
あははは。
実際、今の惨状を考えると、本当に配信をもう一つくらい考えないといけないかも。
>「山の焚火」を観ることが出来ました。
これは貴重な作品ですね。東京のどこかの映画館で観ました。