映画評「不思議の国の数学者」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2022年韓国映画 監督パク・ドンフン
ネタバレあり

高校の数学試験の解答において答えの正誤だけではなく解答までの流れを見るようにするという文科省の指針が2,3年前に出たような気がするが、進学校ではそんなことは何十年も前からやっている。
 わが校では大問4問形式で、20点二問30点二問という配分だった。答えが不正解なら0点ということもあるが、この方法では部分点を貰えることがある。僕もこれで5点を貰い、生涯唯一の零点を免れたことがある。
 大体わが校の数学(及び物理=同じく大問4問形式)ではクラスに一人か二人が満点、三問出来るのは数名で、残りは一問正解で平均点は20~30点という感じだった。これで三問以上正解できる人は東大か医学部へ進んだ。
 この韓国製学園ドラマを観るうちそんな半世紀前を思い出した。

1%というから多分偏差値78くらいの学校に貧困家庭特例で進んで落ちこぼれている男子寮生キム・ドンフィが友達と飲食する為にやった行為が、脱北者の守衛チェ・ミンシクに見咎められて1カ月の退寮処分を喰らう。
 シングルマザーの母親の為に家に戻ってがっかりさせるわけには行かない少年が寮の外で黄昏ているのを守衛が発見してこっそり彼の部屋に泊めることにするが、少年は寝ている間に守衛が数学教師から出された難問を全部解いていることを授業中に気付き、守衛を頑迷な数学教師として教えを乞うことにする。
 後に解るのは、この先生、数学上の難問【リーマン予想】をほぼ解明した大天才だが、脱北して辿り着いた韓国で認められたのは制限された活動のみ。北への望郷を禁じ得ない息子を河で射殺した韓国と、事件をもたらした自身に絶望し、こっそり守衛をして自らを賄っているのである。

この前半は、マイルドな奇譚を得意とするジュゼッペ・トルナトーレを彷彿とする見せ方で頗る快調である。

守衛の正体が判明した後、自ら学校の問題を流出させた数学教師がキム君のせいにしてもっと楽な一般校への転校を強制し、守衛と彼の関係を知っている女子生徒チョ・ユンソが行動をとり始める後半は、些か都合良くお話が進み始めるので映画的に少々がっかりさせられる。
 それでも、終業式の日、転校を受諾したキム君が無理矢理に席に戻された後、チェが現れて数学教師の悪行を明らかにしつつ行う談話は、なかなか爽快かつ感動的である。
 実は韓国当局者であると判明する守衛の知人が気を利かせて彼に完全な自由を与えるという幕切れも些か甘すぎるだが、大衆映画としてぎりぎり許される範囲ではないかと思う。

今一番のミステリーは大谷口座送金事件。その真相次第で大谷は試合に出られるか否かという大ピンチを迎える。今期大リーグの日本人選手をトピックにした、昨日の「タモリ・ステーション」では通訳解雇レベルに留まっていたが、そのレベルではない大事件だ。出演者はそれを知っている為スタジオが凍り付いてい、タモリもやりにくかっただろう。

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