映画評「ヴァチカンのエクソシスト」

☆☆★(5点/10点満点中)
2023年アメリカ=スペイン=イギリス合作映画 監督ジュリアス・エイヴァリー
ネタバレあり

1970年代のオカルト映画ブームの火付け役となった「エクソシスト」(1973年)とお話の構図が近い。あの大ヒット作がアメリカン・ニュー・シネマ時代らしいリアルで大真面目な作品だったのに比べると、こちらはかなりジャンル映画的ではある。

原作となった実話体験のノンフィクションを著した神父の存在は、昔新聞で読んで知っていた。遂に映画になったわけである。

亡夫が所有権を持っていたスペインの古い修道院を受け継いだアメリカ人女性アレクサンドラ・エッソーが、その修繕を指揮する為に、ミドルティーンの娘ローラ・マースデンとローティーンの息子ピーター・デズーザ=フェイオニーを連れてこの修道院を訪れる。
 程なく息子の様相が悪魔憑きのようにおかしくなったので、一家は地元の神父ダニエル・ゾヴァットに頼るが問題解決に至らず、教皇フランコ・ネロは、第一人者ラッセル・クロウを派遣する。
 ここに「エクソシスト」のマックス・フォン・シドウとジェイスン・ミラーに似た二人エクソシスト態勢が生れ、同時に複数の人物に憑りつくことができる強力な悪魔と対峙することになる。

悪魔のやることは「エクソシスト」と似た部分もあるが、かの悪魔が少女に特化したのに対し、こちらは少年やその姉に憑きながら、神父たちの罪悪感を材料に神父二人に迫っていくところに新味と面白味がある。
 とりわけ、終盤、悪魔が二人の心の負荷となっている女性を並行して見せるアクション的な場面は、赤を基調にした構成で迫力があり、結構ゴキゲンにさせてくれる。
 褒めている割に☆★が多くないのは、ジャンル映画のタイプによっては余り多く星を付けない方が映画への接し方として品が良いからである。

「エクソシスト」は10余年前にブルーレイに保存したが、再鑑賞しようと思う時にはディスクが発見できず、違う映画を探している時に見つかる。まるで悪魔のような映画なのである。何分ハイヴィジョンの保存作品だけでも3000本を超えた。最近は☆☆☆くらいでも見どころがあると思うと保存するので急激に本数が増えてしまったのである。やれやれ。

この記事へのコメント

2024年03月27日 15:09
気楽にみられるホラーで、中に時事的な話題もうまく織り込まれていて、よかったですよね。教皇がフランコ・ネロというのがよくて、しかも血を吐いたりする大技決めててさすがネロ! と、うれしくなりましたよ。
オカピー
2024年03月27日 19:38
nesskoさん、こんにちは。

>気楽にみられるホラー

ラッセル・クロウがキャスティングした効果でもあるかも。

>教皇がフランコ・ネロというのがよくて

マカロニ・ウェスタンをやっていた頃には想像もできない配役ですが、上品なだけに終わりにしなかったのも良かったですね。