映画評「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2022年イギリス=アメリカ合作映画 監督ヒュー・ローリー
ネタバレあり
アガサ・クリスティの非シリーズ・ミステリーを映像に移した、三回に渡るTVミニ・シリーズ。
原作は本格ミステリー・ファンにはかなり有名な作品で、原作は読んでいないものの、1980年に英国で映像化されたTVシリーズ版をその2年後くらいに今回同様やはりNHKで観たことがある。なかなか気に入ったことが当時の評価から伺える。
1930年代のウェールズ。牧師館の息子ボビー(ウィル・ポールター)は人が断崖から落ちたのに気付き救助に向かい、男が“なぜエヴァンズに頼まなかったのか”と言ってこと切れるのを見守る。そこへロジャー・バッシントン=フレンチなる男(ダニエル・イングズ)が現れ、ボビーは後を託す。
新聞で死んだ男の正体が明かされた後、若者は検死審問で観た死者の妹と称する女性が男が持っていた写真と全然違うことに気付き、疑問を深める。その直後何故かモルヒネを盛られて死にそうになる。
折しも再会した幼馴染の伯爵令嬢フランキー(ルーシー・ボーイントン)もこの事件に関心を示し、二人は、新聞に載った “妹” の写真が彼の見たものと違うことに関し、ハンプシャーに住むロジャーが写真をすり替えたと確信し、彼が居候するその兄ヘンリーの邸宅の前でフランキーが交通事故を起こした振りをしてまんまと家の中に入り込む。
かくして彼らは、ヘンリーがモルヒネ中毒で、近所に住む中毒に詳しい医師ニコルスンの厄介になっていることを知ると共に、医師の妻モイラ(メイヴ・ダモーディ)が写真の女性であると気付く。別途彼女は、夫がヘンリーの妻シルヴィアと懇ろで、自分とヘンリーを殺そうとしているとボビーに告げる。また、そのシルヴィアは、死んだ男が先日末期癌を苦に自殺した大富豪の知人である探検家であると証言する。
その後実際にヘンリーが射殺死体として発見される。
延々とストーリーを書いても切りがないし、本格ミステリーでもあるので、この辺で切り上げるが、所謂素人探偵もの(昔は私立探偵も素人探偵とされた。というのも昔は探偵と言えば公立探偵即ち刑事だったからであるが、ここでは勿論現在の意味)で、素人探偵ものらしくモルヒネ事件などピンチが随時折り込まれてサスペンス度がミステリー度と同じくらいある。
本格推理ファンには嬉しい、謎めいたダイイング・メッセージから始まり、なかなか華美な設定なので、劇場用映画にしても良いくらいと思う。
TVミニ・シリーズは映画より長いので丁寧に描ける反面、僕くらいの年寄になると、前回までのストーリーを忘れてしまいがちなので、録画などして短期間に集中して見ないと面白味が損なわれると言っておく。
TV映画だが、やはり英米映像界の就業機会均等に対する強迫観念は病的で、原作には存在しないボビーの海軍時代の同僚レイフを黒人俳優ジョナサン・ジュールズが演じている。わざわざ原作にない人物を加えて、それを有色人種にやらせる。そこまでやりますか。当時の英国海軍がアフリカ系を起用したかどうか僕は知らないので、歴史修正と断言できないが、かなりグレー。あるいはこれもまた有色人種による白人ですか? 本当に画面が信じられない時代になって来た。
映画は演劇と違うことに気付いていないか無視している映画人が多すぎる。黒人俳優ジェイミー・フォックスがタランティーノを主題にしたドキュメンタリーにおいて “ (近年は映画人が) 差別に敏感すぎて、芸術をおし殺している” と言っているが、 一連の就業機会均等配役もそれに相当する。
2022年イギリス=アメリカ合作映画 監督ヒュー・ローリー
ネタバレあり
アガサ・クリスティの非シリーズ・ミステリーを映像に移した、三回に渡るTVミニ・シリーズ。
原作は本格ミステリー・ファンにはかなり有名な作品で、原作は読んでいないものの、1980年に英国で映像化されたTVシリーズ版をその2年後くらいに今回同様やはりNHKで観たことがある。なかなか気に入ったことが当時の評価から伺える。
1930年代のウェールズ。牧師館の息子ボビー(ウィル・ポールター)は人が断崖から落ちたのに気付き救助に向かい、男が“なぜエヴァンズに頼まなかったのか”と言ってこと切れるのを見守る。そこへロジャー・バッシントン=フレンチなる男(ダニエル・イングズ)が現れ、ボビーは後を託す。
新聞で死んだ男の正体が明かされた後、若者は検死審問で観た死者の妹と称する女性が男が持っていた写真と全然違うことに気付き、疑問を深める。その直後何故かモルヒネを盛られて死にそうになる。
折しも再会した幼馴染の伯爵令嬢フランキー(ルーシー・ボーイントン)もこの事件に関心を示し、二人は、新聞に載った “妹” の写真が彼の見たものと違うことに関し、ハンプシャーに住むロジャーが写真をすり替えたと確信し、彼が居候するその兄ヘンリーの邸宅の前でフランキーが交通事故を起こした振りをしてまんまと家の中に入り込む。
かくして彼らは、ヘンリーがモルヒネ中毒で、近所に住む中毒に詳しい医師ニコルスンの厄介になっていることを知ると共に、医師の妻モイラ(メイヴ・ダモーディ)が写真の女性であると気付く。別途彼女は、夫がヘンリーの妻シルヴィアと懇ろで、自分とヘンリーを殺そうとしているとボビーに告げる。また、そのシルヴィアは、死んだ男が先日末期癌を苦に自殺した大富豪の知人である探検家であると証言する。
その後実際にヘンリーが射殺死体として発見される。
延々とストーリーを書いても切りがないし、本格ミステリーでもあるので、この辺で切り上げるが、所謂素人探偵もの(昔は私立探偵も素人探偵とされた。というのも昔は探偵と言えば公立探偵即ち刑事だったからであるが、ここでは勿論現在の意味)で、素人探偵ものらしくモルヒネ事件などピンチが随時折り込まれてサスペンス度がミステリー度と同じくらいある。
本格推理ファンには嬉しい、謎めいたダイイング・メッセージから始まり、なかなか華美な設定なので、劇場用映画にしても良いくらいと思う。
TVミニ・シリーズは映画より長いので丁寧に描ける反面、僕くらいの年寄になると、前回までのストーリーを忘れてしまいがちなので、録画などして短期間に集中して見ないと面白味が損なわれると言っておく。
TV映画だが、やはり英米映像界の就業機会均等に対する強迫観念は病的で、原作には存在しないボビーの海軍時代の同僚レイフを黒人俳優ジョナサン・ジュールズが演じている。わざわざ原作にない人物を加えて、それを有色人種にやらせる。そこまでやりますか。当時の英国海軍がアフリカ系を起用したかどうか僕は知らないので、歴史修正と断言できないが、かなりグレー。あるいはこれもまた有色人種による白人ですか? 本当に画面が信じられない時代になって来た。
映画は演劇と違うことに気付いていないか無視している映画人が多すぎる。黒人俳優ジェイミー・フォックスがタランティーノを主題にしたドキュメンタリーにおいて “ (近年は映画人が) 差別に敏感すぎて、芸術をおし殺している” と言っているが、 一連の就業機会均等配役もそれに相当する。
この記事へのコメント
おっと、危なかった! 全部読みそうになりましたが、5行目でストップ!
原作本を先月少し読み出したと思ったら図書館予約の本が回ってきて、取り敢えずそちらを優先しないといけないので一時停止状態です。
映画になっているとはしりませんでした。
映像化の良いところは舞台がどういうロケーションなのかが良く分かるところですね。転落現場がどんな場所なのか本ではイマイチよくわからないです。文庫本のカバーの写真は物凄い断崖絶壁の写真を使っていますがそこまでじゃないですよね。
読み終えてから観たいです。
>原作本を先月少し読み出したと思ったら
おおっ、以心伝心ですかね。
ちょうど良いタイミングでした。
>文庫本のカバーの写真は物凄い断崖絶壁の写真を使っていますがそこまでじゃないですよね。
今回は結構な崖でしたよ^^
下は砂浜ですけど。
こちらは久しぶりに晴天の朝です。図書館の本を2冊を間に挟んでやっと読み終えました。
若者の探偵ごっこもどきが活き活きいていて読んでいて楽しかったです。
映像の方ではどうだっかか知りませんが、若い2人の探偵さんがそれぞれに惹かれてはいけない人物に若気の至りで気を許してしまうのが、またミスリードになっていて、でもこの2人が最後は結ばれるのが鉄板のお約束のはずですし…となると怪しいのはあの2人? クリスティー、やっぱり上手いです。
> その後実際にロジャーが射殺死体として発見される。
本ではヘンリーでしたけど?
>こちらは久しぶりに晴天の朝です。
いやあ、昨日は結構ふりましたねえ。
こちらも良い天気です。しかし、雨の前に比べると、涼しいです。仕事をするには丁度良い。
>> その後実際にロジャーが射殺死体として発見される。
>本ではヘンリーでしたけど?
あははは(笑ってゴマカす)。
書く時頭が混乱しちょったようです。全くの自前でストーリーを書きますので、よくこういうことがあるデス^^;
早速訂正しました(迹も分らぬように)。