映画評「The Son/息子」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2022年イギリス=フランス合作映画 監督フロリアン・ゼレール
重要なネタバレあり
「ファーザー」の見せ方(客観的主観映像もしくは主観的客観描写)が実に面白かった劇作家フロリアン・ゼレールが、その対となる自作戯曲を再び自ら映画化した。
若い妻ヴァネッサ・カービーと再婚して息子ができたばかりの中年有能弁護士ヒュー・ジャックマンが、17歳の息子ゼン・マクグラスの不登校と自らの関係に悩む前妻ローラ・ダーンから頼まれて、当の息子を預かることにする。
少年は新しい学校にも無事に通い始めるが、父親の妻との関係などのせいか、自傷を繰り返し、やがて新しい学校にも行かなくなったことが判明する。それを父親が咎めた結果自傷を超えて遂には本格的な自殺未遂を起こし、精神科で治療することになる。
が、再会した息子はすぐに退院を両親に訴える。二人は、担当医の長期治療の提言と息子の希望との間に揺れに揺れた挙句、自宅に帰すことを決める。が、彼は健気に振舞った後、自殺を遂げてしまう。
というお話で、その直後に、息子が自らの小説を携えてカナダから帰って来るというシーンが出て来てちょっとあれっ?と思わせるが、これは父親ジャックマンの妄想であるという種明かしがされて、終了。
結論から言うと精神科医の提言が正しかったわけだが、あの時点で医師の提言を受け入れても結果はそれほど変わらなかったかもしれない。人生に対する抽象的な懐疑によって生を倦む人を真に変えるのは難しいからである。その意味で主人公の選択に正否の判定を出すことなどできず、若い妻の言う “人生は続く” という人生観によって彼は自らの人生に立ち向かわなければならない。
主人公は父親アンソニー・ホプキンズが自分を苦しめた言葉を息子に発したことに気付いてゾッとするが、それに気付いた彼は何とも立派な父親ではないか!
映画としては、主観的客観映像が満載で映画的に抜群の感興をもたらした「ファーザー」に比べると、ごく一般的な画面で構成されていて特に際立ったところはないが、父親が息子が6歳であった幸福な時代を思い起こすフラッシュバックが3,4度出て来る。
全体的に舞台的という印象のある中で、これと最後の幻想とはぐっと映画的な見せ方になっているものの、★を増やすほどではなく、特にフラッシュバックの多用(と言える程多くもないが)は寧ろマイナスになりかねない。
現在別ブログ【オカピーの採点表】でジョージ・ハリスンのアルバムに当たっている。そこで思い出して曰く、Here Comes the Son と!
2022年イギリス=フランス合作映画 監督フロリアン・ゼレール
重要なネタバレあり
「ファーザー」の見せ方(客観的主観映像もしくは主観的客観描写)が実に面白かった劇作家フロリアン・ゼレールが、その対となる自作戯曲を再び自ら映画化した。
若い妻ヴァネッサ・カービーと再婚して息子ができたばかりの中年有能弁護士ヒュー・ジャックマンが、17歳の息子ゼン・マクグラスの不登校と自らの関係に悩む前妻ローラ・ダーンから頼まれて、当の息子を預かることにする。
少年は新しい学校にも無事に通い始めるが、父親の妻との関係などのせいか、自傷を繰り返し、やがて新しい学校にも行かなくなったことが判明する。それを父親が咎めた結果自傷を超えて遂には本格的な自殺未遂を起こし、精神科で治療することになる。
が、再会した息子はすぐに退院を両親に訴える。二人は、担当医の長期治療の提言と息子の希望との間に揺れに揺れた挙句、自宅に帰すことを決める。が、彼は健気に振舞った後、自殺を遂げてしまう。
というお話で、その直後に、息子が自らの小説を携えてカナダから帰って来るというシーンが出て来てちょっとあれっ?と思わせるが、これは父親ジャックマンの妄想であるという種明かしがされて、終了。
結論から言うと精神科医の提言が正しかったわけだが、あの時点で医師の提言を受け入れても結果はそれほど変わらなかったかもしれない。人生に対する抽象的な懐疑によって生を倦む人を真に変えるのは難しいからである。その意味で主人公の選択に正否の判定を出すことなどできず、若い妻の言う “人生は続く” という人生観によって彼は自らの人生に立ち向かわなければならない。
主人公は父親アンソニー・ホプキンズが自分を苦しめた言葉を息子に発したことに気付いてゾッとするが、それに気付いた彼は何とも立派な父親ではないか!
映画としては、主観的客観映像が満載で映画的に抜群の感興をもたらした「ファーザー」に比べると、ごく一般的な画面で構成されていて特に際立ったところはないが、父親が息子が6歳であった幸福な時代を思い起こすフラッシュバックが3,4度出て来る。
全体的に舞台的という印象のある中で、これと最後の幻想とはぐっと映画的な見せ方になっているものの、★を増やすほどではなく、特にフラッシュバックの多用(と言える程多くもないが)は寧ろマイナスになりかねない。
現在別ブログ【オカピーの採点表】でジョージ・ハリスンのアルバムに当たっている。そこで思い出して曰く、Here Comes the Son と!
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