映画評「グランツーリスモ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2022年アメリカ=日本合作映画 監督ニール・ブロンキャンプ
ネタバレあり

僕はコンピューター・ゲームの類は、初期のインベーダー・ゲームも含めて、一切やった事がないので、全く解らない世界なのだが、実際に極めて近い感覚で車を操縦する形のゲームにグランツーリスモなるシミュレーション・ゲームがあるらしい。
 この愛好者である英国の若者ヤン・マーデンバラ(アーチー・カデウィ)が、日産の企画に乗って本当のプロ・レーサーになり、成功した実話をベースにした映画である。

お話は、これに息子に現実的な道を選んでもらいたい父親(ジャイモン・フンスー)とそんな父親を見返したい息子というちょっとした「エデンの東」タイプの父子確執を交えて、進行する。
 当然、彼は夢を現実化したことで父親の信頼を勝ち得るという展開がそれなりに感動を呼ぶが、やはり個人的には仮想空間のプレイヤーが実際のスポーツに進出するという【事実は小説より奇なり】に近いお話の妙味に尽きる。

このゲームは実際に車を運転する感覚に極めて近いのでこういう話が起ったのだろうが、とは言え、体力や高いGの問題があり、現実離れした感覚は依然残る。野球ゲームなどでは絶対こういうことは起こらない。

レーシング映画としては案外淡白で、思ったほど凄味を感じない。絶対的に視覚でぐっと劣るはずの半世紀以上前の「グラン・プリ」「レーサー」「栄光のル・マン」辺りに味わった半世紀前の興奮の再現はない。刺激に慣れてしまうとこういうことになる。
 主人公の車の順位が画面に現れるのはゲーム画面の応用で面白味となっている反面、僕のように古い人間には安っぽさを時に感じかねない。

他の重要人物は、ゲームと実際のレースの懸け橋となった日産のマーケッティング担当ダニー・ムーア(オーランド・ブルーム)、トレーナーのジャック・ソルター(デーヴィッド・ハーバー)。但し、この二人は架空の人物とのこと。しかし、家族関係(黒人の父、白人の母というのはいかにも現在の映画向き)は実際に沿っている模様。

最近アメリカ映画において、中国や韓国に比して日本/日本人の存在感が薄いので、こういう映画には有難味(珍しいという意味)がある。

折しも我が甥が日産幹部の秘書になったらしい。既婚者(奥方は日産のマーケティング担当)になったし、仕事も忙しくて、そうそう会えないが、今度会った時にこの映画の話でもしてみよう。

この記事へのコメント

2024年04月21日 14:40
やっちゃえニッサンとばかりに、ゲーマーをレーサーとして起用したなんて、驚きでした。
ちなみに今放送中のアニメ「HIGHSPEED Étoile」の主人公も、レースのゲームでスカウトされて、レーサーになってます(いらない情報)。
オカピー
2024年04月21日 17:29
ボーさん、こんにちは。

>やっちゃえニッサンとばかりに、ゲーマーをレーサーとして起用したなんて

正に。バイロン(事実は小説より奇なり、ということわざの発明者)もびっくり。

>「HIGHSPEED Étoile」の主人公も

おっ、これは実話ではないでしょねえ。
エトワールってどういう意味だっけかと調べたら、星でした。星と言えば「巨人の星」の飛雄馬の声を当てた古谷徹がナレーターですってね。