映画評「リバー、流れないでよ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2023年日本映画 監督・山口淳太
ネタバレあり

時間SFを得意とするヨーロッパ企画はあれやこれや色々アイデアを捻出、興味の尽きない作品を作り出して、いつも僕を感心させる。

京都、貴船神社に近い旅館 “ふじや” の関係者と宿泊客が2分間のタイムループに入ってしまう。

2分間というのは前作「ドロステのはてで僕ら」の時間設定と同じで、巻き込まれた人々の意識だけは継続するという設定は「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(2014年)と同じ、彼らが前の経験を学習することで先へ進んでいくという似たような流れであるので二番煎じである感が強いが、その学習が必ずしもタイムループを抜けるために使われるとは限らず、例えばヒロインの仲居ミコト(藤谷理子)が、思いを寄せるもののフランスでの修行に出ようとしている料理人見習いタク(鳥越裕貴)と、勢いで2分間限定の逃避行することになっていくといった脱線ぶりで大いに笑わせてくれて飽きさせない。

映画オリジナル脚本とは言え、この辺りは舞台的なお笑いという感じがする。

終盤は、序盤に出てきた神社お参りの美少女(久保史緒里)を絡めて、2分間という区切りがちょっとした時限サスペンス(やり直しが可能なので余りサスペンス性は高くないが)になっていく辺りがSF的にお楽しみでありましょうか。

今回も長回しが多いが、「ドロステ」のように長回しの必然性はない。

日本人は時間SFが好きだねえ。僕も嫌いではないが、タイムリープもの「東京リベンジャーズ」の続編はついぞ観る気が起らなかった。時間SF以外の要素が感興を呼ばないのだ。

この記事へのコメント

モカ
2024年04月16日 18:46
こんにちは。

実際に貴船には”ふじや“ という料亭があって、そこの娘さんが自分の実家で主役して映画を撮るという珍しいケースだったこともあって、地元新聞等では結構話題になっていました。 

ヨーロッパ企画には地元出身者が多く関わっているようなので、変に京都を美化したり、観光案内映画にしたりしていないところが良いですね。

オカピー
2024年04月16日 19:57
モカさん、こんにちは。

>貴船には”ふじや“ という料亭があって、

これは聞いて知っておりました。

>そこの娘さんが自分の実家で主役して映画を撮るという珍しいケース

これは知りませんでした。
確かに珍しいなあ。

>変に京都を美化したり、観光案内映画にしたりしていないところが良い

最近多いご当地映画は、それが目的もであるので、どうしてもそういう感じになりますね。
モカ
2024年04月18日 23:06
こんにちは。

さっき観ました。面白かったのですが疑問点が一つあって、2分前に戻った時に雪が積もってたり、無かったりするのはどういうことですかね?

貴船って夏に川床で食事するところだとばかり思ってましたが、冬は座敷でボタン鍋を食するところだったんですね…知らんかったです。でもまぁやはり夏に行くところでしょうね。

映画では言ってませんでしたが、貴船は平安の昔から“丑の刻参り”で有名な場所らしいです。藁人形を一寸釘で…怖いですね。
オカピー
2024年04月19日 08:47
モカさん、こんにちは。

>2分前に戻った時に雪が積もってたり、無かったりするのはどういうことですかね?

映画の中では、“時間線が変わっている”と説明していました。時間線は、タイムスリップ/タイムリープものにおいて、今世紀に入って利用され始めたパラレルワールドという概念の別用語のようですね。これを使うと、タイム・パラドックスも全部説明できてしまう、卑怯な考えなんですけど。
実際には撮影中に色々と天候からみで不具合があったので、台詞を変えて帳尻を合わせたようです。

>貴船は平安の昔から“丑の刻参り”で有名な場所らしいです。

僕も当然知らなかったですが、どうもそうらしいですね。
ここが発祥の地かも。