映画評「乱れからくり」
☆☆(4点/10点満点中)
1979年日本映画 監督・児玉進
ネタバレあり
東宝としては市川崑監督=石坂浩二の金田一耕助シリーズ(角川映画として始まった)の成功に気を良くして、と言うか、柳の下の泥鰌を狙って作ったのではないかと想像される本格ミステリー。
泡坂妻夫の本格推理小説の映画化である。時代劇畑の児玉進を監督に担ぎ出したのが謎だが。
競輪で当てた例(ためし)のない推理作家志願の青年・松田優作が仕方なく野際陽子が所長を務める探偵事務所に就職、早速、実業家一家の調査を始める。当主(岸田森が老け役)の依頼に基づき、二人は、甥で部長の沖雅也とその妻・篠ひろ子が渡米の為に乗り込んだ車を追跡する。まかれた後に夫婦の車が事故を起こし、やがて燃え上がる。細君は無傷だが、夫君は大火傷の末に病院で死ぬ。
田中邦衛が現場の指揮を執る警察は事故で片付けるが、その直後に沖田が生前準備していたプレゼントを受け取った従妹・結城しのぶが目を銃撃されて死ぬ。
かくして前の事件も含めて殺人と判断し直した警察の捜査が進む中、今度は社長の息子・峰岸徹がからくり人形に仕掛けられた毒針にやられ、樹林の下に設けられた地下道を松田が探って老人の部屋の横に辿り着いた時老人も毒殺される。
欧米の初期の本格ミステリーは殺人件数がさほど多くないが、日本の本格ミステリーは結構多い。本作も4件出てくるわけで、それを91分という短尺で処理するのだから慌ただしすぎる感じは否めない。その割に主人公が探偵事務所に向かうまでに時間がかかり過ぎていて、バランスが悪いという欠点が目立つ。
本作の欠点は配役にもある。沖雅也である。ミスキャスト云々ではない。当時の人気俳優で序列の上の方に名前がある男優がそんなに早く姿を消すわけがなく、この段階で終盤の予想がついた。配役がネタバレをしてしまうという例である。
その後にさらにどんでん返しのような真相が明らかになるが、これもまあ想定内で意外とは言えない。
結城しのぶ殺害の謎も目をやられたところから、どう殺されたか一目瞭然。警察は観客と違って彼女が贈り物をされたことを知らないから犯行が掴めないのは仕方があるまい。
役者の顔触れが豪華なのを別にすると、TVの2時間サスペンスドラマ程度の出来栄えではないか。
原作の評判はもの凄く良い。本作の内容を忘れた頃に読んでみよう。
1979年日本映画 監督・児玉進
ネタバレあり
東宝としては市川崑監督=石坂浩二の金田一耕助シリーズ(角川映画として始まった)の成功に気を良くして、と言うか、柳の下の泥鰌を狙って作ったのではないかと想像される本格ミステリー。
泡坂妻夫の本格推理小説の映画化である。時代劇畑の児玉進を監督に担ぎ出したのが謎だが。
競輪で当てた例(ためし)のない推理作家志願の青年・松田優作が仕方なく野際陽子が所長を務める探偵事務所に就職、早速、実業家一家の調査を始める。当主(岸田森が老け役)の依頼に基づき、二人は、甥で部長の沖雅也とその妻・篠ひろ子が渡米の為に乗り込んだ車を追跡する。まかれた後に夫婦の車が事故を起こし、やがて燃え上がる。細君は無傷だが、夫君は大火傷の末に病院で死ぬ。
田中邦衛が現場の指揮を執る警察は事故で片付けるが、その直後に沖田が生前準備していたプレゼントを受け取った従妹・結城しのぶが目を銃撃されて死ぬ。
かくして前の事件も含めて殺人と判断し直した警察の捜査が進む中、今度は社長の息子・峰岸徹がからくり人形に仕掛けられた毒針にやられ、樹林の下に設けられた地下道を松田が探って老人の部屋の横に辿り着いた時老人も毒殺される。
欧米の初期の本格ミステリーは殺人件数がさほど多くないが、日本の本格ミステリーは結構多い。本作も4件出てくるわけで、それを91分という短尺で処理するのだから慌ただしすぎる感じは否めない。その割に主人公が探偵事務所に向かうまでに時間がかかり過ぎていて、バランスが悪いという欠点が目立つ。
本作の欠点は配役にもある。沖雅也である。ミスキャスト云々ではない。当時の人気俳優で序列の上の方に名前がある男優がそんなに早く姿を消すわけがなく、この段階で終盤の予想がついた。配役がネタバレをしてしまうという例である。
その後にさらにどんでん返しのような真相が明らかになるが、これもまあ想定内で意外とは言えない。
結城しのぶ殺害の謎も目をやられたところから、どう殺されたか一目瞭然。警察は観客と違って彼女が贈り物をされたことを知らないから犯行が掴めないのは仕方があるまい。
役者の顔触れが豪華なのを別にすると、TVの2時間サスペンスドラマ程度の出来栄えではないか。
原作の評判はもの凄く良い。本作の内容を忘れた頃に読んでみよう。
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