映画評「春の珍事」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1949年アメリカ映画 監督ロイド・ベーコン
ネタバレあり
梶原一騎は「巨人の星」の大リーグボール3号を考える時この映画をヒントにしたのではないか。という以前に、投手であれば皆こんなボールを考えようか。プライムビデオにて再鑑賞。
木に害虫を寄せ付けない薬剤を悪戦苦闘して開発中の化学講師レイ・ミランドが偶然溶液に触れたボールが木をよけることに気付く。婚約者ジーン・ピーターズの父親である上官教授に今のままでは結婚を許されそうもないと、大リーグのセントルイス・カージナルスに身分を隠して売り込む。
監督は、最初全く信用していなかったこのド素人の投げる球に誰のバットも当たらないのを見て早速エースにし、彼が投げる試合は負けず、遂にワールドシリーズの最終戦となる。
ところが、ここでチームの監督は毛生え薬と勘違いして奪われた(直接奪ったのは相棒の捕手ポール・ダグラス)為ピンチを迎える、という文字通り珍無類のファンタジー喜劇。
彼が研究室を抜け出し身分を隠してプロ球団と契約、身内に知られるとまずいと逃げ出す辺りに今一つピンと来ないところがあるにはあるが、こういう奇妙な喜劇もまた楽しい。骨折をした為手に添え木を当てたダグラスが球を取れなくなるというのも相当可笑しい。
現在大リーグでは、投手が回を投げ終える度に主審がグローヴと指先を見る。現在ならば彼の投球はアウトだろうか? ただの液体だから解らないかもしれないですな。 大谷が昨年のWBCの時主審に指を見せようとすると 主審が “(大リーグの試合ではないから)必要ない” と手を横に振り、 大谷が笑っていたのを思い出す。
さて、映画サイト等のストーリー紹介にあるほど主人公が野球好きであったり経験者に見えない為、いくらバットにボールが当たらないと言っても、全部見送れば連続四球でノーヒットで負けるだろうと考えていると、実際それを思わせる投球内容を見せる箇所が少しだけ出て来る。しかし、それは結局本格化しない。
プロでも投げ方が理に適っていない投手では一度乱れるとストライクが取れなくなるケースが結構ある。真ん中に投げることは案外難しいのである。読売ジャイアンツの外国人リリーフは球速があってもコントロールが悪い投手が多くて9回にヒヤヒヤさせられたことを思い出す。
閑話休題。
主人公が二度と野球しなくても良くなる終盤の展開はなかなか上手い。
Allcinemaにアメリカの野球映画に出演する俳優は野球をしたことがないのかと面白がっている人がいるが、僕は必ずしもそう見ない。当時の投手は現在の投手と比較すると変に見える投げ方をするのが普通で、それに準じた投げ方に見える。案外手投げになっていず、僕は悪くないと思う。
この映画の影響であろうか、ずっと成績の悪かった野球チームがシーズン当初に1位にいたりすると時々【春の珍事】などとスポーツ欄に書かれたりもするが、今年の【春の珍事】は大谷の専属通訳だった水原の事件だろう。日本では大谷疑惑は一掃されたが、アメリカではまだ疑っている人が僅かにいるらしい。大方人種差別主義者だろうが、それとは別に、他人、特に成功者の失敗を喜ぶ輩はいるのだ。
1949年アメリカ映画 監督ロイド・ベーコン
ネタバレあり
梶原一騎は「巨人の星」の大リーグボール3号を考える時この映画をヒントにしたのではないか。という以前に、投手であれば皆こんなボールを考えようか。プライムビデオにて再鑑賞。
木に害虫を寄せ付けない薬剤を悪戦苦闘して開発中の化学講師レイ・ミランドが偶然溶液に触れたボールが木をよけることに気付く。婚約者ジーン・ピーターズの父親である上官教授に今のままでは結婚を許されそうもないと、大リーグのセントルイス・カージナルスに身分を隠して売り込む。
監督は、最初全く信用していなかったこのド素人の投げる球に誰のバットも当たらないのを見て早速エースにし、彼が投げる試合は負けず、遂にワールドシリーズの最終戦となる。
ところが、ここでチームの監督は毛生え薬と勘違いして奪われた(直接奪ったのは相棒の捕手ポール・ダグラス)為ピンチを迎える、という文字通り珍無類のファンタジー喜劇。
彼が研究室を抜け出し身分を隠してプロ球団と契約、身内に知られるとまずいと逃げ出す辺りに今一つピンと来ないところがあるにはあるが、こういう奇妙な喜劇もまた楽しい。骨折をした為手に添え木を当てたダグラスが球を取れなくなるというのも相当可笑しい。
現在大リーグでは、投手が回を投げ終える度に主審がグローヴと指先を見る。現在ならば彼の投球はアウトだろうか? ただの液体だから解らないかもしれないですな。 大谷が昨年のWBCの時主審に指を見せようとすると 主審が “(大リーグの試合ではないから)必要ない” と手を横に振り、 大谷が笑っていたのを思い出す。
さて、映画サイト等のストーリー紹介にあるほど主人公が野球好きであったり経験者に見えない為、いくらバットにボールが当たらないと言っても、全部見送れば連続四球でノーヒットで負けるだろうと考えていると、実際それを思わせる投球内容を見せる箇所が少しだけ出て来る。しかし、それは結局本格化しない。
プロでも投げ方が理に適っていない投手では一度乱れるとストライクが取れなくなるケースが結構ある。真ん中に投げることは案外難しいのである。読売ジャイアンツの外国人リリーフは球速があってもコントロールが悪い投手が多くて9回にヒヤヒヤさせられたことを思い出す。
閑話休題。
主人公が二度と野球しなくても良くなる終盤の展開はなかなか上手い。
Allcinemaにアメリカの野球映画に出演する俳優は野球をしたことがないのかと面白がっている人がいるが、僕は必ずしもそう見ない。当時の投手は現在の投手と比較すると変に見える投げ方をするのが普通で、それに準じた投げ方に見える。案外手投げになっていず、僕は悪くないと思う。
この映画の影響であろうか、ずっと成績の悪かった野球チームがシーズン当初に1位にいたりすると時々【春の珍事】などとスポーツ欄に書かれたりもするが、今年の【春の珍事】は大谷の専属通訳だった水原の事件だろう。日本では大谷疑惑は一掃されたが、アメリカではまだ疑っている人が僅かにいるらしい。大方人種差別主義者だろうが、それとは別に、他人、特に成功者の失敗を喜ぶ輩はいるのだ。
この記事へのコメント
サッカーだったら、ボールを引きつけるシューズがあれば…?
フォックスの1949年作品なので、マリリンと共演したことがあるスターが見られて、そこも個人的には良しです。
双葉師匠は「ロイド・ベーコン監督のあざやかな三塁打」と言う言葉で締めくくって75点を与えています。
大リーグボール3号は、この作品をヒントにしたのだと思いますよ(苦笑)。
「アストロ球団」でも、かつてのライバル無七志が似たようなボールを投げていました。
>「危険な関係」の映画版
たくさんあるんですね~!藤田敏八が監督した日本製も一度見たいです。
>バットを避けるボールがあれば最強でしょうね。
ストライクさえ投げられればという条件が付きますけどね。
素人なら、100%ノーヒットで一回持たない。この映画のレイ・ミランド、野球経験があるとは言っていなかったけどなあ。聞き落としたかな?
>双葉師匠は「ロイド・ベーコン監督のあざやかな三塁打」
ロイド・ベーコンはミュージカル以外は余りパッとしない印象がありますが、本作は実に面白い。 “面白いつまらない” は70%くらいは監督の責任ではないですけど。