映画評「最も危険な遊戯」
☆☆★(5点/10点満点中)
1978年日本映画 監督・村川透
ネタバレあり
松田優作の単独主演映画第1作だろうか?
「遊戯」シリーズとして結局3本作られることになる、シリーズ第一弾。昔観た時も大したことないと思ったが、今回もやはり大したことがないと思いつつ、今の品が良いだけで面白味の薄い映画よりは全然楽しめる。
疑問百出の内容であるが、どちらかと言えばその破綻ぶりを楽しむべき作品である。
財界の大物が誘拐される事件が続発、一人が殺され、一人が拉致中。
探偵的な側面もある殺し屋鳴海昌平(松田)は、大企業の顧問小日向(内田朝雄)から、誘拐された娘婿を助ける役目を請け負う。が、その誘拐に絡むギャングの情婦杏子(田坂圭子)を脅して何とかそのアジトに踏み込んで一味を全員仕留めたものの、救出した対象を途中で別のグループに射殺される。そのグループは何と桂木(荒木一郎)をトップとする刑事の一組織と判明する。
そして、何故か彼の住処を去らない杏子を誘拐した刑事グループと対峙することになる。
関係していたギャングや刑事の怖さを知っているという理由で鳴海の住処に居続ける杏子の行動など奇妙なことの連続だが、彼が刑事たちの乗るセドリックを追う場面の奇妙さが一番笑える。
オリンピックの1500mのランナーでも無理だろうという長い距離を彼は追い続けて車から引き離されず、見失うこともない。刑事側も追われることを知っているにしても車が遅過ぎはしませんか、という苦笑が生じる。
ここを笑うのは良いが、敢えて追わせているのなら “追ってきます” という台詞は妙で、この辺に永原秀一という脚本家の知恵の浅さを感じる。笑って良い場面であっても行動と矛盾する台詞は感心できないのだ。
小日向は、国家プロジェクトの入札を巡る争いがあり、組織的に企業誘拐を企んでいる陰謀団のトップ(見明凡太郎)を殺すのが本当の目的と鳴海に打ち明けるが、トップを仕留めた後事前に張り巡らされた警察の四方からの銃撃を受けるうちに鳴海は小日向の真の目的=それは最終的にプロジェクト推進の邪魔になりかねない鳴海を殺すこと=に気付くのである。
この、いかにもB級アクション的なプロジェクト(軍事防衛設備の開発)の内容が、必ずしも絵空事でなくこの日本で現実に行われていても不思議ではないことが、昨今の報道から理解できる感じさえする僕であるが、この映画においてはまあ仕掛けにすぎず、結局は腕立て伏せで体を鍛え銃を構え、車を追う松田優作の姿を見せるのを目的としていることは如実に伺える。
最後は序盤と同じくまた喜劇調になって、ストリップの音楽が「人間の証明」主題歌であり、踊り子が帽子を持っているという松田絡みのおふざけがある。実は「人間の証明」絡みのおふざけは次の「殺人遊戯」でも見られる。当時彼の代名詞となっていた感じなのだろう。
この映画の松田は、「竜馬暗殺」(1974年)で共演した原田芳雄と殆ど同じ喋り方をする。声質が似ていることもあって、きっと目標にしたのであろう。
WOWOWは何年か前に松田優作特集をやった。放映権という大人の事情があるからこちらが思ったように編成できないのは解るが、来月予定されているATG特集も本数が少なすぎる。NHKは衛星放送を1本化し、大相撲がある月は本数が減ることが解った。ハイビジョン放送でない時には週に21本もやっていて、宝の山だったのだが。受信料がわずかに下がってもこれでは嬉しくない。
1978年日本映画 監督・村川透
ネタバレあり
松田優作の単独主演映画第1作だろうか?
「遊戯」シリーズとして結局3本作られることになる、シリーズ第一弾。昔観た時も大したことないと思ったが、今回もやはり大したことがないと思いつつ、今の品が良いだけで面白味の薄い映画よりは全然楽しめる。
疑問百出の内容であるが、どちらかと言えばその破綻ぶりを楽しむべき作品である。
財界の大物が誘拐される事件が続発、一人が殺され、一人が拉致中。
探偵的な側面もある殺し屋鳴海昌平(松田)は、大企業の顧問小日向(内田朝雄)から、誘拐された娘婿を助ける役目を請け負う。が、その誘拐に絡むギャングの情婦杏子(田坂圭子)を脅して何とかそのアジトに踏み込んで一味を全員仕留めたものの、救出した対象を途中で別のグループに射殺される。そのグループは何と桂木(荒木一郎)をトップとする刑事の一組織と判明する。
そして、何故か彼の住処を去らない杏子を誘拐した刑事グループと対峙することになる。
関係していたギャングや刑事の怖さを知っているという理由で鳴海の住処に居続ける杏子の行動など奇妙なことの連続だが、彼が刑事たちの乗るセドリックを追う場面の奇妙さが一番笑える。
オリンピックの1500mのランナーでも無理だろうという長い距離を彼は追い続けて車から引き離されず、見失うこともない。刑事側も追われることを知っているにしても車が遅過ぎはしませんか、という苦笑が生じる。
ここを笑うのは良いが、敢えて追わせているのなら “追ってきます” という台詞は妙で、この辺に永原秀一という脚本家の知恵の浅さを感じる。笑って良い場面であっても行動と矛盾する台詞は感心できないのだ。
小日向は、国家プロジェクトの入札を巡る争いがあり、組織的に企業誘拐を企んでいる陰謀団のトップ(見明凡太郎)を殺すのが本当の目的と鳴海に打ち明けるが、トップを仕留めた後事前に張り巡らされた警察の四方からの銃撃を受けるうちに鳴海は小日向の真の目的=それは最終的にプロジェクト推進の邪魔になりかねない鳴海を殺すこと=に気付くのである。
この、いかにもB級アクション的なプロジェクト(軍事防衛設備の開発)の内容が、必ずしも絵空事でなくこの日本で現実に行われていても不思議ではないことが、昨今の報道から理解できる感じさえする僕であるが、この映画においてはまあ仕掛けにすぎず、結局は腕立て伏せで体を鍛え銃を構え、車を追う松田優作の姿を見せるのを目的としていることは如実に伺える。
最後は序盤と同じくまた喜劇調になって、ストリップの音楽が「人間の証明」主題歌であり、踊り子が帽子を持っているという松田絡みのおふざけがある。実は「人間の証明」絡みのおふざけは次の「殺人遊戯」でも見られる。当時彼の代名詞となっていた感じなのだろう。
この映画の松田は、「竜馬暗殺」(1974年)で共演した原田芳雄と殆ど同じ喋り方をする。声質が似ていることもあって、きっと目標にしたのであろう。
WOWOWは何年か前に松田優作特集をやった。放映権という大人の事情があるからこちらが思ったように編成できないのは解るが、来月予定されているATG特集も本数が少なすぎる。NHKは衛星放送を1本化し、大相撲がある月は本数が減ることが解った。ハイビジョン放送でない時には週に21本もやっていて、宝の山だったのだが。受信料がわずかに下がってもこれでは嬉しくない。
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