映画評「ファルコン・レイク」

☆☆★(5点/10点満点中)
2022年カナダ=フランス映画 監督シャルロット・ル・ボン
ネタバレあり

思春期の少年が年上の女性を思慕するという設定はツルゲーネフ「初恋」など相当数に上る。それは多く夏休みなどという期間に発生する。

13歳のフランスの少年バスティアン(ジョゼフ・アンジェル)が、両親と弟共に、同じフランス語圏であるカナダのケベック州の湖畔へヴァカンスにやって来る。母親の親友がそこで暮らしているのだ。
 数年ぶりに見る3歳年上のその娘クロエ(サラ・モンプチ)はぐっと大人っぽくなり、その奔放な言動に影響されて少年は悩ましい気分を味わうことになる。

酒や煙草や性体験といった、思春期映画に付き物の要素がちりばめられてスケッチ的に展開していくが、終盤映画はにわかにドラマティックになる。

夜の湖畔で他のヴァカンス連中と騒いでいるうち、泳ぎの苦手な少年も誘われて湖を向こう岸まで泳ぎ渡ることになるが、遂に岸に辿り着くことはない。クロエの言ったように急死した彼は亡霊になる。

4:3画面で思春期へのノスタルジー気分を醸成する画面で思春期ものらしくずっと推移していたので、この急激なファンタジー映画的展開への移行には吃驚した。
 殺す必要があったのかねえ(笑)。結果的に映画としての性格が曖昧になった気がするが、幽霊の存在を信じるクロエの許に少年の亡霊が急行する辺り実に切ないものがある。
 亡霊となった少年は、"幽霊は感じるものだ" と言っていたクロエを信じて、駆けつけたのかもしれない。案の定、少年が(相手には聞こえないはずの声で呼びかけると)彼女は僅かに振り返る。切なくも瑞々しい幕切れになってはいるかもしれない。

バスティアン・ヴィヴェスという人の手になる劇画をフランス系カナダ人女優シャルロット・ル・ボンが映画化。

フランス映画は・・・と仰っている人がいるが、監督がカナダで舞台がカナダであれば、合作とは言え、実質カナダ映画である。登場人物の雰囲気、ムードもフランス映画とは少し違う。

この記事へのコメント