映画評「ハンガー・ゲーム0」

☆☆(4点/10点満点中)
2023年アメリカ映画 監督フランシス・ローレンス
ネタバレあり

我が邦の「バトル・ロワイアル」(2000年)と西洋人がお好きな闘技場ものを合体させたようなYA小説を映画化した人気シリーズのビギニング。悪役的な位置にあるスノウ大統領の少年時代(と言うと子供みたいだが、一般的には若い青年と言われる二十歳前後)を描いている。

スノウ将軍の息子であるコリオレーナス(トム・ブライス)は、10回目を迎えるハンガー・ゲームに出場する、歌が得意なだけのひ弱な美少女ルーシー・グレイ(レイチェル・ゼグラー)の教育係となる。教育係は初めての試みで、特権階級から選ばれ、ただ独りの勝者の教育係には利益が齎される。
 かくして1区2人ずつ全12区24人の闘いが始まり、ルーシー・グレイは運に恵まれ、コリオレーナスの様々な支援もあり、歌の力でマッド・サイエンティスト(ヴィオラ・デイヴィス)の繰り出す毒蛇さえ味方につけ、遂には勝ち抜いてしまう。
 他方、不正のばれたコリオレーナスは20年間拘束される軍隊へ送り込まれ、紆余曲折の末、安定した身分を得たものの再び追われる羽目になったルーシーと逃げることにする。

やはり年寄にYAものはなかなか厳しいものがある。そもそも157分という長さがネックであることに加え、少なからぬ登場人物の名前は、完全に差別化できなくても良いとはいえ、解らないと困るところで解らなくなることもあって大弱りである。

三部構成の第2部までは一応お話が理解できるが、最後の第3部コリオ君が軍隊に送られ、ルーシーと再会してからの展開は殆ど理解できない。彼やその他の人物が何をやりたくて実際に何をやっているか解らない。
 とりわけ二人の逃避行は謎だらけである。あの距離感(心理的距離)でよく道行に出たものである。ヒロインは広義の性善説(儒教の性善説は教育の大事さを訴えてい、その意味では性悪説と変わらない)を信じてい、コリオ君に不信を抱くも善なる部分の存在に期待してあのような行動を取ったのだろうか。コリオ君の性格もよく解らない。こちらの集中力に問題があることは認めるが、もう少しすっきり作れないものだろうか。

最初から、一定以上の記憶力・理解力のある若者をターゲットにしているのだろうが、一応、登場人物の幾ばくかの整理ともっと要領を得た見せ方が望まれる、と言っておきます。

フランシス・ローレンスのカメラを揺らさない演出はお気に入りだが、最近は昔に戻ってそれが当たり前になりつつあるから、高得点につながらない。

コリオレーナス(コリオレイナス)は、シェイクスピアが作り上げたローマの軍人政治家。

この記事へのコメント

モカ
2024年05月12日 23:49
こんばんは。

>コリオレーナス(コリオレイナス)は、シェイクスピアが作り上げたローマの軍人政治家

 そしてルーシー・グレイはワーズワースの詩の中で歌われた嵐の中で行方不明になる少女から取ってあるのかな? 
 
オカピー
2024年05月13日 15:45
モカさん、こんにちは。

>ルーシー・グレイはワーズワースの詩の中で歌われた嵐の中で行方不明になる少女から取ってあるのかな?

本作のルーシー・グレイも行方不明ではないですが忽然と消えますので、そうでしょうね。